公園でキャッチボールすらできない世の中

振り返ってみると、僕が小学生だった1980年代は大らかな時代でした。僕が生まれ育った田無市(現・西東京市)にはまだ野球をして遊べる空き地が点在していましたし、もちろん公園で野球をすることができました。僕らがいつも遊んでいたのは、近所にあった遊水池。

「今日はあそこに集合しよう!」と下校途中に友達と約束し、家にランドセルを置くや否や、カラーバットとボールを持って遊びに出掛けたことを覚えています。すぐ手の届く範囲に野球がある毎日でした。大きな声で盛り上がっても注意されることはなかったし、元気に遊ぶ子供たちを地域の大人たちが温かい目で見守ってくれていたように思います。

昭和から平成、令和へと元号が変わり、街から次々と空き地が消えて住宅が建ち並ぶようになると、いつしか公園でキャッチボールをすることさえも禁止されるようになってしまいました。自分の生活圏内に野球をして遊ぶことのできる公園やグラウンドがなければ、子供たちが野球から離れていくのは当然でしょう。子供の野球離れを食い止めたいなら、まずは野球をできる場所を整えることが第一歩になるはずです。

「かべにボールをぶつけないで」と書かれた壁
写真=iStock.com/Kunihito Ikeda
※写真はイメージです

ボールを使う場所を確保するためにスクールに通う子供たち

すでに野球チームに所属している子供たちも、ボールを使って自主練習をする場所が見つからずに困っていると聞きます。最近ではチームの練習以外にアカデミーやスクールに通う子供たちが増えているようですが、スキルアップや体力強化という目的があるものの、その裏にはボールを使った練習ができる場所を確保したいという切実な思いもあるようです。

公園でボール遊びが禁じられている自治体が多い中、東京近郊で言えば、埼玉県吉川市ではボール遊びができる公園があり、野球に限らず、バレーボール、バスケットボール、サッカーなど球技全般を楽しむ子供が多いそうです。

吉川市の公園では、野球のキャッチボールをしている子供たちの横で、別のグループの子供たちがバレーボールの練習をしていることもあるそうですが、それぞれが安全に配慮しながら練習をしているので、特に大きな問題もなく活動できているようです。