社内文書は「新浪さん」
同じ目線が共鳴を生む

経営者として文書を書く際に心がけていることは、「わかりやすさ」と「一貫性」、そして「共鳴」です。

文書にまとめるときには、教養をひけらかそうと難しい言葉を選びたくなります。教養は大事なものですが、相手に通じなくては意味がない。わかりやすくてクリアな表現を用いるべきでしょう。また、これまでの主張や説明と矛盾があっては、信用してもらえません。もし変わったのならば、その理由も明記する。そして、読み手の問題意識を踏まえた内容で書くことです。

おそらく多くの人には、「どうせ社長はわかっていない」と思われています。だから一方的な指示をいくら出しても、「共鳴」は得られない。「それは甘えだぞ」とか「たしかにそれは重要だ」といった現場の問題意識を踏まえた言及が必要です。それができれば、「よしッ、一緒に頑張ろう」という「共鳴」に繋げられるのです。

現場を知る一番の方法は、日頃のコミュニケーションでしょう。今回は文書について述べましたが、私が最も重視しているのはフェース・トゥ・フェースのコミュニケーションです。私に宛てた社内文書には、最上段に「新浪さん」と書かれています。役職ではなく、人物本位とし、仲間意識を培うためのルールです。コミュニケーションが円滑ならば、共鳴のある文書が書けます。堅苦しいだけの文書は、何のためにもならないでしょう。

人を動かす文書とは、相手の問題意識に突き刺さるものです。そうした文書を書くには、相手の事情が理解できていなければいけない。読み手と同じ高さの目線を持ててさえいれば、「よしッ、一緒に頑張ろう」と思われる文書をまとめられるはずです。

※すべて雑誌掲載当時

(小山唯史=構成 相澤 正=撮影)
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