チェックする側は現在40人程度しかいない

日本の宇宙スタートアップは100社程度と言われるが、アクティブに活動をしているところは、限られている。同じところにお金が集中し、「使いきれなくなるのではないか」との懸念や苦言が、政府や産業界、学術界からも出ている。

2つ目は、適切な支援先を選ぶことができるかどうかだ。

基金事業の巨費に目をつけて、詐取しようとする人や組織が現れる可能性もある。支援対象の企業や大学だけでなく、下請け、取引相手、共同研究先などを含めてひとつひとつ確認し、日本の税金や技術が、思わぬ組織や個人に流れてしまわないように注意する必要がある。

きちんとチェックできる体制づくりが欠かせないが、その役目を担うJAXAの担当者は、現在約40人。JAXAによると、金融関係者、政府や自治体からの出向者など、さまざまな人員を集めて順次拡充し、当面は50人程度を目指すという。公募を始める7月には担当組織を整えるため、この時に「かなり人員が増えるのではないか」(政府関係者)と言われている。

だが、第一弾の基金だけでも、JAXAの昨年度の予算の1.4倍もある。ふさわしい対象を選び出し、技術開発を成功させ、実用化、産業化などの成果へと結びつけることができるかどうかの判断は、かなり難しい。どのような陣容でのぞむかという全体像を示さずにスタートを切った形になっていることも、懸念を高める一因になっている。

日本人の税金が海外企業に使われる?

3つ目は、基金の巨費に見合うように、日本の技術力や研究力を向上させることができるかどうかだ。

内閣府によると、海外の企業も、日本法人を作っているなどの条件を満たせば宇宙基金に応募できる。日本法人がなくても、宇宙基金を得た日本企業との共同研究が可能だ。海外の大学も、宇宙基金を得た日本の大学と共同研究できる。

内閣府の文書では「支援対象者が同盟国・同志国との国際共同研究・実証等を行うことを可とする」としているため、そうした事例が多々出てくるのではないかと思われる。国際協力は重要であり、ビジネスチャンスや成果拡大につながる可能性があるが、あまり増えすぎると、宇宙業界以外の人々から「なぜ日本国民の税金で海外企業を支援するのか」という批判も出てくるだろう。

本当に日本にとってプラスとなるかどうか、精査が必要だ。それもJAXAの役割だという。

マイクロ衛星
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基金の目的は、実施した技術開発や研究の成果を、ビジネスにつなげたり、社会で使われるようにしたりすることだ。

かつて、JAXAが開発した技術は、あまり産業化や実用化につながらないと指摘され、「技術開発のための技術開発」と批判されていた。宇宙基金による技術開発も、企業まかせにするだけだと、技術開発だけで終わってしまう心配がある。目的実現に向けてJAXAがどこまで支援すべきかも大きな課題だ。