炎症を放置すると食道粘膜が脱落する…

さて内視鏡検査で逆流性食道炎と診断された場合、放置しているとどうなるだろうか。

「逆流性食道炎、つまり“胃と食道の境目の炎症”を放置していると、びらんになり、やがて食道粘膜が脱落します。そしてその部位が胃の粘膜に置き換わる場合もあるのです。これをバレット食道といい、食道腺がんの発生リスクを高めるとされています。ですが、欧米人との食習慣や体格の違いから日本人でこれが急増するとはあまり考えられません。それより近年は、胃と食道の接合部付近のがんが増えている印象があります」(後藤田医師)

胃がんは、ピロリ菌感染率と高塩分食摂取率が高い現代の80代がピークで、年代が下がるとともに発症率が低下している。一方で胃と食道の接合部付近のがんは、50代でもみられるとか。

そして、がんやバレット食道に至らなくても、逆流性食道炎の症状は生活の質を大きく落とす。胸が焼けるような症状があり、市販薬で治るならいいが、1カ月ほどでぶり返すようなら放置せず、内視鏡検査を行いたい。

たとえ逆流性食道炎と診断されたとしても、適切な服薬と生活習慣の改善で健康な状態に戻れるのだ。

※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年5月31日号)の一部を再編集したものです。

(撮影=今井一詞)
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