食べすぎや飲みすぎで胃の内圧が上昇

胃で食べものが消化されるとき、食道と胃の境目の筋肉「下部食道括約筋」が収縮し、胃の内容物が逆流しないように働く。この筋肉が必要ないときにゆるんでしまうと胃から食道への逆流が起こるのだが、肥満体型の人は、腹圧の上昇により逆流が起こりやすくなってしまうという。そのほか食べすぎ飲みすぎなどの胃内圧の上昇、脂肪の多い食事、加齢による変化でも下部食道括約筋がゆるむとされる。

50年以上の薬剤師経験をもつ西澤啓子氏によると、降圧剤の副作用で胃酸が逆流することもあるという。

「カルシウム拮抗剤に分類される降圧剤(アムロジン、アダラートCRなど)や、コデインを含む咳止め薬は、下部食道括約筋をゆるませる作用があるのです。特に降圧剤は長期に服用するので、胸焼け症状などに悩む人は別の降圧剤を処方してもらうよう、主治医に相談することを勧めています」

【図表】胸焼けになる原因・逆流性食道炎の仕組み

胃酸分泌を抑え胸焼けをラクにする酸分泌抑制剤

肝心の胸焼け症状がつらいときは、胃酸の分泌を抑え、食道へ逆流する胃酸を少なくする働きをもつ薬(酸分泌抑制剤)を服用すればラクになる。酸分泌抑制剤は、大きく3種類に分かれる。

ひとつは、市販薬「ガスター10」を代表とするH2ブロッカー(ヒスタミンH2受容体拮抗薬)のタイプ。これより強く胃酸分泌を抑える働きがあるものが「プロトンポンプ阻害薬」(PPI)と呼ばれるタイプで、それに分類される処方薬として「タケプロン」などがある。そして最も強力に胃酸分泌を抑え、かつ即効性があり、作用が持続するものが「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー」(PCAB)に分類される「タケキャブ」。こちらもPPIと同様、医療機関でのみ処方される薬で、逆流性食道炎の重症患者に用いられる。