酸分泌抑制剤の長期間服用で胃もたれになることも

しかし、後藤田医師は「症状があるから」と、安易に酸分泌抑制剤を長期間服用することに懸念を示す。

「消化器官は口から肛門までつながっています。つまり、病原体も食事と一緒に口から入ってしまう可能性がある。胃の中が強い酸(胃酸)によって酸性環境に保たれているからこそ、ピロリ菌など一部の例外を除き、細菌やウイルスを殺菌できるんですね。そして胃酸は消化にも大きく影響します。タンパク質消化酵素であるペプシンは、胃酸がなければ生まれないのです」

胃にタンパク質が入ってくると、胃壁からペプシノーゲンと胃酸が分泌される。ペプシノーゲンは胃酸によって活性化され、ペプシン(タンパク質消化酵素)になる。つまり、胃酸分泌を抑える薬を服用することで症状が解消するどころか、消化酵素が生まれず、かえって胃もたれなどになってしまう恐れがあるのだ。

「また胃酸はミネラルの吸収も助けています。たとえば造血に大切な鉄(Fe)の吸収には十分な胃酸が必要なのです」(同)

がんリスクを高める逆流性食道炎の対処法

そもそも、本当に胃酸が逆流して胸焼け症状が起きているのか。それは内視鏡検査によって食道と胃の境目に炎症が起きているかを確認しなければ、正確な診断はできないのだという。

「逆流性食道炎と混同されるのが、機能性ディスペプシアです。胸焼けや胃もたれ、みぞおちの痛みなど逆流性食道炎と似たような症状があります。ただこちらは、内視鏡検査をしても異常が見つからず、ストレスなどが影響して胃の働きが悪くなった状態。痩せ型の方に多い印象ですね。一方、ぽっちゃりタイプで、胸骨の裏が『焼けるように痛い』と訴える人は逆流性食道炎の可能性が高いと感じます」(後藤田医師)

後藤田医師自身も8年ほど前に夜間の胸痛に苦しみ、最終的には自ら逆流性食道炎と診断し、酸分泌抑制剤のタケキャブを服用していた。「けれどもボクシングを始めて脂肪を落としたら症状がスッキリしました。やはり肥満の人は体重を減らすことです」(同)と、アドバイスする。

西澤氏も「逆流しやすい人は、食後2〜3時間は横にならないようにしたり、夜間に逆流症状が出る人は枕を高くして寝るなどの生活習慣の工夫でも症状が和らぎます」という。