ほとんど自覚症状がないままがんが進行するすい臓は「沈黙の臓器」と呼ばれる。JA尾道総合病院副院長の花田敬士さんは「腹部の違和感や背中の痛み、下痢といった自覚症状を放置していると、そのうち白目や皮膚が黄色くなる黄疸が見られるようになる。とくに、原因不明の腹痛が長引く場合は、すい臓がんを疑ってみたほうがいい」という――。
※本稿は、花田敬士『命を守る「すい臓がん」の新常識』(日経BP)の一部を再編集したものです。
すい臓がんの自覚症状で最も多いのは腹痛
すい臓がんが怖いのは、初期の段階ではほとんど自覚症状がなく、そのため見つかった時点である程度進行してしまっていることが多い点です。
肝臓も、病気がある程度進まないと自覚症状が起きないことがよく知られています。少々のことでは痛みなどの症状を出さないことから、肝臓もすい臓も「沈黙の臓器」と呼ばれています。
私たちがすい臓がんを少しでも早く見つけるためにまずできることは、その自覚症状について知っておくことです。
症状が現れるのは病状がある程度進行してからだとしても、なるべく早く検査につなげるためには、自分や身の回りの人にここで紹介する症状がないか注意することが大切です。
自覚症状としてよく見られるのは、腹部の違和感、背中の痛み、下痢、軟便などで、最も多い症状が腹痛です。
「すい管」が圧迫されることで痛みが出る
なぜ、お腹が痛くなるのかというと、がんによって「すい管(すい液の流れる管)」が狭くなり、すい液の流れが悪くなることですい臓自体に炎症が起きたり、がんがすい臓の周りにあるお腹の神経を巻き込むことで強い腹痛を起こすためです。
ただし、こうした腹痛の原因がすい臓にあると気がつく人はほとんどいません。
多くの人は「胃の不調かな?」と考えて病院を受診します。エックス線や胃カメラで胃を検査しても、当然のことながら異常なしと言われてしまいます。
そして、市販の胃薬を飲んでやり過ごしているうちに、白目や皮膚が黄色くなる黄疸が見られるようになり、ようやくすい臓がんを疑うケースも多くあります。原因不明の長引く腹痛は要注意です。