すい臓の機能が落ちると糖尿病リスクが高まる
このように重要な役割を持っているすい臓ですから、正常に機能しなくなると、生命活動に大きな支障が生じます。
外分泌機能が落ちると、先ほども触れたように、消化不良を起こして下痢を繰り返すようになります。また、内分泌機能が落ちることで、血液中の糖からエネルギーを生み出すことができなくなったり、血糖値がコントロールできなくなって糖尿病を引き起こしたりします。
すい臓は、普段は目立たないけれども、生命維持に不可欠な役割を担っている臓器なのです。
すい臓の病気によってその機能が衰えてくると、薬などによってすい臓の機能を補わなくてはなりません。そのため、インスリンを注射したり、消化酵素薬を服用したりする必要が出てくるのです。
早期発見、早期治療に挑戦した「尾道方式」
ほんの数ミリのサイズでも転移を起こす可能性があり、抗がん剤治療もその効果は2〜3割程度しか期待できない。となれば、できる限り小さなうちにがんを見つけて、転移が起こる前に切除することが重要になります。
これまですい臓がんでは早期発見、早期治療はほぼ不可能なことだと考えられてきましたが、そこに挑戦したのが「尾道方式」でした。
すい臓がんから命を守るには、手術可能な状態で発見することがカギになります。「尾道方式」では、そのためにできる最善の方策を考えました。
それは、腹部の症状などがある人だけでなく、危険因子を複数以上持つ人(詳しくは本書の3章で解説します)を対象に、地域の診療所で血液検査や、腹部エコー(超音波)などの画像検査をしていただき、そのなかからわずかでも疑わしいと思われる人がいれば、その地域ですい臓の精密検査ができる中核病院に紹介するというしくみです。
中核病院では、外来で行える、体への負担が比較的少ない、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像診断)、EUS(超音波内視鏡)などの精密な画像検査を実施します。
その結果、さらに高度な検査が必要と判断されたときには、入院して行う精密検査を実施します。
そして、最終的にすい臓がんと診断された場合は、すみやかに適切な治療を行います。
また、早急な治療は必要ないものの経過観察が必要と判断された場合は、診療所と中核施設が連携して慎重に観察を続けていきます。