男性のテストステロンの分泌量は20~30代がピークですが、その後はゆるやかに減っていきます。しかし、これは加齢に伴うものというよりも環境やストレスに左右されます。特に40代あたりでテストステロンが急激に減少するケースがあります。テストステロンの減少により引き起こされる心身の不調は、近年、「男性の更年期障害」として知られるようになりました。

ただ、エストロゲン(女性ホルモン)の急激な低下が原因となる更年期障害は女性の体に必ず訪れる生理的なプロセスであるのに対し、男性の更年期障害は誰もが経験するものではなく、病気だと考えられるようになっています。そうして名づけられた病名が、「LOH 症候群(Late Onset Hypogonadism)」です。

そう、あなたが感じている活力の低下は、テストステロンの急激な低下によって引き起こされた病気である可能性が高いのです。

テストステロン減少⇔肥満の悪循環を断ち切ろう

でも、安心してください。LOH症候群は治る病気です。落ち込んでいたテストステロン・レベルを再び上げることができれば、あなたは失われた活力を再び取り戻すことができます。その復活の鍵を握るのは、食事・運動・睡眠など、生活習慣の改善です。

まず取り組んでほしいのは、肥満を解消することです。

テストステロンの減少と肥満は、切っても切れない関係にあります。テストステロンには筋肉を大きくし、体脂肪を少なくする働きがあるので、テストステロンが減ると体脂肪が増えます(実際にテストステロンが低い人に薬として外から投与すると、年齢を問わず、内臓脂肪が減って筋肉がついてくることがわかっています)。

そして、体脂肪にはテストステロンをエストロゲン(女性ホルモン)に変換する働きがあります。体脂肪の増加により体内の女性ホルモン・レベルが高くなると、テストステロンを出そうとする刺激ホルモンが脳から出なくなります。そうしてますますテストステロンの分泌が減るわけです。こうして、テストステロンの減少→肥満→テストステロンの減少……という悪循環が発生します。

この悪循環を断ち切るために、まずは食生活を見直してください。基本は、たんぱく質をしっかりとること。そして、糖質もある程度とることです。

近年、ダイエットのため糖質を徹底的にカットする人が増えています。しかし、テストステロンを作るには糖質とコレステロールが不可欠なので、極端な糖質制限はテストステロンを下げ、筋肉を減らしてしまいます。最近は糖質制限を推奨する医師もこの点に注意して、糖質過多にならない適切な糖質制限ということを強調するようになりました。

テストステロンを上げるためには油も大切

「油=肥満」というイメージをお持ちの方は多いでしょう。確かに脂質(油)は1gあたり9キロカロリーあり、1gあたり4キロカロリーの炭水化物と比べると高カロリーで肥満につながりやすいと昔は思われていました。しかし近年の研究で、油は一概に悪者ではないこと、テストステロンを増やすためには油が欠かせないことがわかってきました。

大事なのは、どの油を摂取するかです。大量摂取を避けるべきは、オメガ6を多く含むコーン油などのサラダ油です。これは体を酸化させます。揚げ物や炒め物に使っている油は、体によくないものであることが多いかもしれません。

積極的に取るべき油は、オメガ3を豊富に含む油です。いまはアマニ油やエゴマ油など、スーパーで手軽に良質な油が買えるようになりました。オメガ3を含み、かつ調理に使いやすい油というと、オリーブオイルが代表選手でしょう。オメガ3以外では、MCT(中鎖脂肪酸)オイルをコーヒーに入れたりして日常的に摂取するのもオススメです。

良質な油をとるため、肉は積極的に食べましょう。肉はたんぱく質も豊富で、テストステロンを上げるために優秀な食材です。特に羊肉はカルニチンというアミノ酸が多く、これが精巣を通じてテストステロンを増やします。インドカレー店ではマトンカレーを注文するといいかもしれません。羊にはやや劣りますが、スーパーで手に入りやすい牛もカルニチンを多く含みます。