学校の成績が将来に直結する…親たちの危機感
中国は厳格な学歴社会で知られ、子供時代の成績は将来の職業選択の幅や収入の高低に直結する。とくに若年層の失業率が高止まりする現在、親たちの危機感は大きい。
SCMP紙は、「若者の失業率が記録的な高水準にある現在、厳格な教育制度が家庭に与える重圧を浮き彫りにしている」と指摘する。
米CNBCニュースによると昨年12月時点で、中国政府による公式の若年層失業率(16~24歳)は、14.9%と高い水準にあった。さらに、実態は公表値をはるかに上回る可能性がある。
米フォーチュン誌は昨年8月、北京大学経済学教授による分析をもとに、失業率は最大46.5%に達するとの推定を報じた。記事によると、中国ではアメリカの算定法と異なり、積極的に求職していない人を統計の分母に含めない。このため失業率の実態は、見かけ上の数字よりはるかに悪いという。
英エコノミスト誌の調査部門「EIU」は、中国の経済動向を予測する報告書『チャイナ・アウトルック・2024』を発表。「若年失業率は2024年も高止まりするだろう」と述べ、雇用を取り巻く厳しい状況を指摘している。回復は2025〜28年を待つことになるとの見方を示した。
足元では新卒者が急増する一方、それに見合った雇用市場が創出されておらず、労働力は供給過剰に。結果、新規雇用者は依然として低賃金を提示されているとEIUは分析する。
高まるばかりの教育熱、塾の禁止策が裏目に
異常な宿題熱は、中国国内のメディアも問題視している。
中国国営TVの国際ニュース部門「CGTN」は2018年、親たちのストレスが限界に達していると報じていた。中国のソーシャルメディア・ウェイボーには、夜遅くまで宿題に手をつけなかった娘に激怒した33歳の母親が、急性脳梗塞を発症し、入院したとする書き込みを紹介している。CGTNは「母親は快復したが、この投稿に多くの親の共感が集まった」と報じている。
別の母親は、5年生の息子の宿題の面倒を見ていたところ、心筋梗塞で入院する事態に。手術を受け、2本の冠動脈ステント(血管を拡張する網目状のチューブ)を埋め込んだ。この母親は、「命に比べたら、宿題は放っておくことにしました」と考えを変えた。
記事によると、中国では子供たちの興味や実践的なスキルを重視するため、宿題は教科書の知識に留まらないという。親は、子供たちが手工芸品を仕上げたり、学校の教材を準備したりするのを手伝う必要があるという。
こうした現状を受け、中国教育部(日本の文科省に相当)は2021年から、9年間の義務教育期間中の宿題と課外授業を削減する「二重軽減策」を始めた。2021年7月から塾の新規開設を禁止したほか、家庭教師についても夏休み期間の教育活動を禁じた。