何度教えても正解できない息子に母親は激昂。ストレスから呼吸困難に陥り、駆けつけた夫が病院に運んだ。病院に到着する頃には母親はパニック状態になっており、全身汗だらけだったという。医師は、治療が間に合わなければ死亡の恐れすらあったと述べている。

子供に手を上げる親も少なくない。香港の日刊紙『サウスチャイナ・モーニングポスト(SCMP)』は昨年8月、宿題の指導中に母親が「暴力的に怒り狂い、何度も平手打ちを見舞い、叫び、家具を蹴り上げた」と報じた。7月下旬、東部・安徽省あんきしょうで撮影されたこの動画は、学習机に向かう息子と、指導にあたる母親の姿を映している。

「学習指導恐怖症」が流行語になった

母親は椅子に座る息子を何度も叩きつけながら、「あなたの要約は正しくない! 何を書いた⁉」「やり直しなさい! 何をしているの? きちんとできないの⁉」「ちゃんと座って! ちゃんと座って‼」と暴言を投げつける。

幼い息子は平手打ちから逃れようとして椅子から転げ落ち、画角からフレームアウトする。母親はなおも家具を殴りつけ、扇風機を倒し、ついには自分の顔を叩き始めた。

この母親は、「彼の宿題が長引いていて、とても腹が立って息子を蹴ろうとしましたが、結局壁を蹴ってしまい足の小指を骨折しました」と語った。その後、母親は息子を放課後の個別指導クラスに入会させることにしたという。

SCMP紙は「子供の宿題指導中に親が感情を爆発させることは、中国ではごくごく一般的となった」と指摘。現地の親たちのあいだで、「学習指導恐怖症」(fear of tutoring syndrome)という新たな言葉が流行していると報じる。

これとは別に昨年2月、人気動画アプリのドウイン(国際版のTikTokに対し、同じByteDance社が提供する中国国内版アプリ)にアップロードされた動画では、何度指導しても理解しない息子に泣き崩れる母親の姿が収められている。

小学校低学年ほどの男の子に書き順を教えていた母親だが、半泣きの男の子よりもむしろ、母親の方が精神的に堪えているようだ。顔を真っ赤にしてあふれる涙を腕で拭い、鳴き声を漏らしながら天を仰ぐ。

「根本的な原因は国の教育評価制度にある」

過大な量の宿題がこうして親たちの命を危険にさらし、子供との軋轢を招いている。中国共産党の英字機関紙『チャイナ・デイリー』は今年4月、中国の子供を取り巻く厳しい状況を報じた。中国・21世紀教育研究院の熊丙奇院長は同紙に対し、「学校の宿題を終わらせた後でなお、親や(塾など)校外の機関が出した課題を夜の10時、11時まで続けなければならない生徒もいる」と指摘している。

院長はさらに、根本的な原因は国の教育評価制度にあると指摘。中学校と大学の入学試験は得点で子供を評価しているため、この評価システムを変えない限り、親子の負担を軽減することは難しいと述べた。