だが、皮肉なことに二重軽減策は、親の教育熱をあおる結果となった。CNBCは、塾規制によって教育業界では大勢の失業者が生まれたと指摘。こぼれ出た労働力の受け皿となる就職先が存在せず、若年層の失業率は悪化の一途をたどったとしている。結果として親たちは子供の将来を憂い、かえって教育に熱を入れる悪循環が生まれている。
親たちが編み出した苦肉の策、子供の宿題をライブ配信
子供たちを宿題に取り組ませようと、親たちは苦肉の策に出ている。香港の日刊紙「サウスチャイナ・モーニングポスト」は今年1月、南西部・四川省に住む母親を紹介した。9歳の息子が宿題をこなす様子をライブ配信し、子供の集中力を高めることに成功させたと報じている。
母親は1月初めから、中国版TikTokの「ドウイン」にライブ配信を投稿。効果は「驚くべきもの」だったという。人々に見られている意識から集中力が持続し、息子はいつもの2〜3倍の速さで問題を解き終えた。900人以上がリアルタイムで視聴し、息子は一度も休憩することなく宿題を終えた。ドウインでは子供の姿の配信が許可されていないため、手元だけを配信したという。
中国では児童・生徒を対象としたオンライン個別指導が流行している。ライブ配信の例は、こうしたサービスに料金を支払わずに子供を机に向かわせる“妙案”でもあろう。親の苦心から生まれた策ではあるが、子供のプライバシーの観点から議論を呼びそうだ。多くの親が「独創的」と好意的な反応を示す一方、「遊んだり楽しんだりする年齢なのに、宿題をするために監視されるなんて」と批判的なコメントもみられる。
宿題アプリが中国で広がっている
過大な宿題負担はまた、歪んだサービスを生み出した。宿題アプリ「Gauth AI(ガウスAI)」だ。米フォーブス誌は4月3日、「TikTokの親会社(ByteDance社)が提供する宿題アプリを多数の若者が使っている」と報じた。
宿題の教材をカメラで撮影すると、GauthがAIを駆使して解法を提示する。答えだけでなく途中式も示すことから、アプリの結果を丸写しするだけで宿題を終えることができる。このアプリは国際版として展開し、中国以外のユーザーに広まっている。中国でも、類似機能のある「Hippo Learning」をByteDanceが提供している。
終わっていない課題を免除、「宿題ブレーカー」導入に賛否
親の負担を見かねた一部の学校が、独自の施策に踏み切るケースもある。午後9時半を回っても終わらない宿題を免除する「宿題ブレーカー」の導入だ。チャイナ・デイリーによると、南部・広西チワン族自治区の南寧市の小学校で導入されたほか、類似の施策が各地で導入されている。
だが、効果は不明だ。子供の睡眠時間の確保に有益だとの賛同意見が聞かれる一方、根本的に学歴社会を変えない限り、親たちは厳しい教育を続けざるを得ないと考える専門家もいる。