企業の活動が社会に及ぼす影響に配慮する「CSR」

では、「CSR」「ガバナンス」とは何を指すのでしょうか?

・CSR

CSRは「Corporate Social Responsibility」のことで、「企業の社会的責任」と訳されています。

ちょっと曖昧な言葉ですが、要するに会社も社会の構成員のひとつなのだから、「利益のためならなんでもやる」というのではなく、自分たちの活動が社会に及ぼす影響に配慮し、あらゆるステークホルダー、つまり消費者、取引先、投資家、地域、従業員も含めて、すべての利害関係者からの要求に対して適切な対応を取るという意味です。近年、話題になっているESGやSDGsへの対応もそのひとつと言っていいでしょう。

ESG、ゼロカーボンエミッション環境技術コンセプト持続可能な開発目標グリーンシーズンの道路のトップビュー環境とビジネスの成長を一緒に持続可能な資源
写真=iStock.com/Sakorn Sukkasemsakorn
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ちなみにESGとは、E(Environment:環境配慮)、S(Social:社会性)、G(Governance:企業統治)の3つの観点から会社を分析し、それらに配慮した経営を行っている会社に投資するという、ある種、投資家に課せられた責務のようなものです。

・ガバナンス

そしてガバナンスですが、ESGにも含まれているもので、「企業統治」を意味します。企業統治と言うと、なんのことかよくわからなくなってしまいますが、要するに「健全な企業経営が行われるような監視・統制が確立されているかどうか」ということです。正式には「コーポレート・ガバナンス」と言います。

いわば「内容が充実した会社のパンフレット」

統合報告書には以上のような非財務情報がふんだんに盛り込まれており、かなり立派なつくりになっています。写真も豊富に使用されていて、フルカラーのものが大半です。

別な見方をすると、内容が充実した会社のパンフレットみたいなものです。したがって、読んでもらいたい対象者も投資家だけでなく、取引先や顧客、就職活動中の学生など、より幅広くなります。特にBtoB系で、一般の人から見ると中身がよくわからない会社の場合、会社を知ってもらうという意味でも有効です。

ただ、非財務情報に関しては数値化しにくい面があるので、特に投資家の立場からすれば、どう評価すればいいのかわからないという問題があります。

これに関しては、株価は必ずしも財務データだけで決まるものではない反面、最近は機関投資家の間でも、非財務情報を重視する動きがあったりするので、その意味で統合報告書を出す会社が増えつつあるとは思うのですが、会計士の立場から言わせてもらうなら、やはり数値化できないものは、「よくわからない」というのが正直な感想です。

したがって、いくら非財務情報が重要だといっても、最終的には利益に反映されるようにならなければ、なんの意味もないと考えています。ビジネスモデルにしても、ガバナンスにしても、あるいは環境対応にしても、最終的には売上増と利益増につながり、さらには財務状況の改善に反映されることが重要なのです。