社長の管理力や問題解決力が非常に重要になる

第三フェーズでの社長の役割は、育成してきたスタッフの管理と、社内の問題解決です。大きくなった会社では必ず問題が発生しますから、それの火消しをするのが社長の役割です。

また、対外的な問題解決も、社長にしかできません。ラーメン店なら、食中毒が発生してしまったり、価格を急に値上げせざるをえなくなってしまったら、社長が解決しなければいけません。

食中毒によって顧客に被害が出たら、ただちに社長自らが顧客に謝罪し、賠償金などについて協議します。同時に、食中毒の原因を特定し、再発防止策を伝えます。

この際に重要なのはスピード感です。事故が発生した直後に社長自らが動くことと、部下ではなく社長が誠実に謝罪することが今後を左右します。

食材が値上がりしたなら、代替できる食材や、もっと安い業者を検討したり、それらが見つからなかったりしたら、食材の量を減らすか、販売金額を上げるかを検討します。それも社長が決断すべき案件です。

しかし、こういった緊急事態を除き、平時の現場はスタッフに任せましょう。社長の仕事はあくまで火消しであり、問題がなければ出番はありません。

仕事の資料を見る人と店内にいる人のイメージ
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第三フェーズに入ると、会社の拡大にともなってコストも大きくなりますから、社長の管理力や問題解決力が非常に重要になります。それなのに第一フェーズの感覚のまま現場ばかりに目を向けてしまうと、非常にまずいことになります。

社長が時間と労力をすべて現場で使ってしまうと、トラブル解決や将来的な方向性の模索、会社の管理などもっと重要で、社長にしかできない仕事をやれません。つまり、会社はいつまでたっても成長できません。

会社の拡大に伴って、幹部スタッフの育成の難易度も上がる

くり返しになりますが、第三フェーズではコストもリスクも一気に増大します。私が第二フェーズでの売却を進める理由がここにあります。第二〜第三フェーズのどこで会社を売るべきかは、社長個人の判断に左右されます。

もし会社の拡大に伴う自分の役割の変化をちゃんと理解し、それに適応できるなら、自分で会社を大きくする手もあるでしょう。しかし、その能力がまだ備わっていないと感じたなら、さっさと売却すべきです。

もう一つ、会社を売却するタイミングに関わる要素が、スタッフの育成です。

会社が拡大すればするほど業務も複雑になりますから、スタッフ、特に幹部スタッフに求められる能力も高度化します。再度ラーメン店に例えると、第二フェーズ初期くらいまでのスタッフはラーメンを作る能力が重要ですが、徐々に店舗の売上やアルバイトの管理能力も求められるようになるというわけです。

会社の拡大に伴って、幹部スタッフの育成の難易度も上がっていきます。

この段階で育成の手を抜く選択肢だけはありえません。会社の将来を閉ざすことになります。

ですが、育成にはいつか限界が来ます。望む能力の幹部が社内にいない、という時期がいつか来るはずです。

そうなったときの選択肢は二つです。

一つは、社外から人材を採用するということです。大手の同業他社の幹部クラスなら、あなたが望む能力を持った人がいるでしょう。

しかし大手からの引き抜きはとても難しいものです。私も何度か、1500万円くらいの年俸を用意してトライしたことがありますが、結局成功しませんでした。かといって、それ以上の待遇を用意すると人件費が大きくなってしまいます。