「(旧統一教会信者のように)マインドコントロールを受けている」
折しも、旧統一教会問題で世間が賑わっていた2023年冬、親族が「(叡敦さんも旧統一教会信者のように)マインドコントロールを受けているに違いない」と気づいて、叡敦さんに脱出するよう説得。叡敦さんは救出され、ようやくA氏の元から離れることができたという。
マインドコントロールから解き放たれた叡敦さんは、「(A氏とB氏の)してきたことは、僧侶として決して許されない。(両氏が所属する)天台宗において、これらの行状を詳らかにして、二人の僧籍を剝奪してくださることを切に願います」などと、A氏とB大阿闍梨の懲戒を求めて天台宗宗務総長宛に陳情書と、証拠書類を提出した。
そして3月4日、叡敦さんは初めて、比叡山の麓にある天台宗宗務庁で聴取を受けることができた。聞き取り調査を終えた叡敦さんは同日午後、弁護士らと共に滋賀県大津市内で記者会見を開き、心境を吐露した。
「(信頼する大阿闍梨B氏に対しては)とても大きくて優しい存在だった”仏様”が、怖い仏様に変わった。仏様に見捨てられるという気持ちで、何も考えられない状態だった。生きているのがつらかった。天台宗には二人の(僧籍剝奪)処分を望んでいます。それだけです」
叡敦さんは、こう涙ながらに語った。
実は天台宗では2015年ごろ、長野の善光寺のトップである大勧進貫主がセクハラやパワハラ問題が浮上。天台宗は2018年に貫主を解任する騒ぎになっている。
それに続いて二度目の醜聞となる今回。天台宗務庁は取材に対し「今のところは何もいえない」とだけ話した。組織内で、思考停止状態に陥っていると思われる。
だが、今回は善光寺のスキャンダルとは比べ物にならないほど、極めて重大な問題に発展する可能性を秘めている。旧ジャニーズ事務所の性加害問題、あるいはお笑いコンビ「ダウンタウン」の松本人志氏の性加害報道など、社会が性加害に対して、厳しい目を向けている。しかも、今回の加害者は、ただの僧侶ではなく、天台宗のアイデンティティそのものといえる千日回峰行者と、その一番弟子だ。
今後は天台宗内部の調査と懲戒の判断、再発防止策の提示などを待つことになる。だが、対応の仕方を誤れば、天台宗は空中分解してしまうことも十分あり得るだろう。