「負ける技術」とは相手に満足してもらう技術

「相手の願望を満たす」って、具体的にどういうことなのでしょうか?

どんなことをイメージしますか。相手が出した要求を無条件に受け入れるとか、相手に迎合するといったことでしょうか?

答えはNOです。

「相手の願望を満たす」というのは、相手の言いなりになることではありません。

ここでいう「相手の願望を満たす」とは、あなたが自分の伝えたいことや実現させたい希望を口にすることよりも、まず相手に対して理解を示すことです。

もっと言うと、相手の要望が何なのか、その要望の裏にある背景に理解を示すことです。

そのためには、相手の話を「聴く」ことが前提になります。

耳に手を当てて聞く女性
写真=iStock.com/bymuratdeniz
相手の話を「聴く」ことが前提(※写真はイメージです)

聴き役に徹して相手の話したいように話をさせてあげると、見方によっては、一方的に話をしている相手のほうが主導権を握って優位に立っているように見え、それを聴いている側はぐいぐいと攻め込まれているような印象を与えるかもしれません。

でも、それでよいのです。

交渉を進めるうえで大切なことは、自分を知り、相手を知ること。自分が何を欲していて、相手がどんな人で何を求めているのか。これがわからないまま漠然と交渉をしていてもお互いにとって何のメリットもありません。

相手がどんな人で、どんな考えを持っているのかを知るために、相手に質問をしましょう。相手の話に耳を傾け、相手の本音・本心がどこにあるのかに関心を向けましょう。

こちらの質問に対して相手がレスポンスしてきたら、さらに質問をしたり、共感をしたりします。

アクティブリスニングとパッシブリスニング

あるいは、相手の言っていることを言い換えたりするなどのアクティブリスニング、効果的な沈黙や相づちなどのパッシブリスニングなどの聴き方を実践して、相手の本音・本心を探っていきます。

相手への理解を深めるように意識して聴いていくと、相手が話せば話すほど、そしてこちらが相手の話を聴けば聴くほど、相手もこちらのことを信頼して、たくさん話してくれるようになります。

大事なのは、相手にたくさん話をしてもらい、「自分の意見や考えを受け入れてもらっている」と感じてもらうことです。

最初は自分の意見や要望はまったく語らなくてもよい、くらいに思っていて問題ありません。

聴き方が上手になると、相手は「自分のことをわかってくれようとしている」と感じ、そのことに満足感を得るようになります。