「聞く」ではなく「聴く」

・対話……聴いて共感する

対話は、実際の交渉における相手との話し合いのことです。先ほどお伝えしたように、対話中はあなたの意見や希望・要望を伝えることを優先するのではなく、相手の話を聴くことに比重を置きます。

ここで意識してほしいのは「聞く」ではなく、「聴く」ということです。

単に相手が発している言葉を「聞く」のではなく、言葉の裏にある相手の本音や感情にも意識を向けて「聴く」ようにすることが大切です。

交渉では、どうしても自分の要求や希望を伝えたくなってしまいます。その結果、こちらも話すほうに意識が取られてしまいがちです。

でも、そこを押しとどめ、「聴く:話す」の割合は少なくとも「聴く7:話す3」、できるならば「聴く8:話す2」くらいでもいいくらいです。

質問をして相手が求めているもの、相手の奥深くにある本音などを引き出したり、相手の言葉の裏に隠れている感情に関心を示して共感することが大切です。

「聴いている」姿勢を相手に見せることができると、相手はあなたになびいてきます。

そうすると、会話もスムーズなものとなり、あなた自身のペースを崩さずに交渉を進めることができるのです。

プレッシャーをかけていい

・クロージング……敬意を持ってプレッシャーをかける

クロージングは交渉の終盤になります。ここをどのように工夫したら、交渉がうまくまとまるのでしょうか。

保坂康介『心理カウンセラー弁護士が教える 気弱さん・口下手さんの交渉術』(日本実業出版社)
保坂康介『心理カウンセラー弁護士が教える 気弱さん・口下手さんの交渉術』(日本実業出版社)

クロージングの場面でも交渉相手を尊重するスタンスを持つように意識するのですが、この段階では、多少なりとも交渉相手に心理的なプレッシャーをかける必要があります。

もしかすると、気弱さん・口下手さんは、ここを苦手としている方が多いかもしれませんね。

まず、気弱さん・口下手さんはこう自分に言ってあげてください。

「私(僕)は、交渉相手にクロージングでプレッシャーを与えてもいい」

交渉というのは、うまくまとまってもまとまらなくても、お互い結論を出すことに変わりはありません。その結論を促すのがクロージングですから、必然的に相手にはプレッシャーをかけることになります。

だから、プレッシャーをかけていいんです。あとは、そのプレッシャーのかけ方です。

大事なのは相手への配慮と敬意です。相手への配慮・敬意を示しながらのクロージングは相手も納得しやすくなります。

このようにそれぞれの過程で準備をして、意識を変えていくことで、より劇的に満足度の高い交渉結果をもたらすことができます。

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