欧米から排除される「ティックトック」

ティックトックというのは、ユーザーが短い動画を投稿し、それを視聴して楽しむことから、ショート・ビデオ共有サイトとも呼ばれ、SNSに分類されるサービスです。

このティックトックを、23年5月には米モンタナ州で禁止する法案が可決されています。20年7月には、トランプ前大統領が中国政府への個人情報流出を防ぐため、米国内でティックトックを禁止すると発表していました(その後バイデン大統領によって取り消し)が、22年にはメリーランド州で、さらにテキサス州、ネブラスカ州、サウスカロライナ州などいくつかの州でもティックトック使用禁止令が出されています。

しかも23年3月には、この米国の動きに呼応するかのように、英国政府が政府端末でのティックトックの使用を禁止。カナダ、EUなどでも政府端末での使用を禁止する動きに向かっています。

まったく同じように、生成AIでも米中対立が起こりはじめています。中国発の生成AIには、偽ニュースやデマなどの偽情報が生成され、これが拡散される可能性がある、と米国では考えられています。逆に中国では、米国発の生成AIでは中国に都合の悪い情報が生成されることを懸念しており、両国の対立を激化させているのです。

生成AIでは悪意のあるウイルスやプログラムといったものも、生成できる可能性があると述べましたが、サイバー攻撃のコードやツールといったものが生成される可能性もあり、米中両国の重要インフラや情報システムを攻撃し、対立を拡大させる可能性すらあります。

日本が迫られる「大きな決断」

米中両国とも、生成AIでは世界をリードする技術を持っており、互いに開発競争を激化させています。そんな状況のなか、ヨーロッパやアフリカには経済的な理由から中国に近づいている国もあります。一方、韓国や台湾といった東アジアでは、安全保障の問題からアメリカに協力することが既定路線となっています。

生成AIの米中対立については、中国メディアも大きな関心を寄せています。23年末に中国の技術系メディアである「GizChina」に掲載された記事では、オープンAIの成長に大いに注目していると記していました。

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23年末のオープンAIのレポートによれば、同社の22年の年間収益が2800万ドル(約40億円)だったのに対し、23年には何と16億ドル(約2320億円)を超えたといいます。前年比で57倍もの増加です。オープンAIでは、月に1億3000万ドル(約189億円)もの収益を上げているというのです。

中国メディアはこのレポートを紹介しながら、オープンAIの成長は、AI技術の可能性とさまざまな業界での高度なAIソリューションに対する需要の増加を示している、とまで評価しています。

この生成AIでの米中対立のなかで、日本はどちらの生成AIを利用するのかの選択が求められています。安全保障や機密情報の保護という点では、米国の生成AIを選択するべきですが、価格面から中国の生成AIを選ぶといったケースもないとは言えません。米中対立の間で、日本はどちらを選択すべきなのか、大きな決断に迫られているのです。

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