感傷に浸ると、老いを痛感してしまう

最近は、テレビやラジオの視聴者が高齢化したせいか、多くの放送局で「昭和の歌謡曲」の特集が組まれています。

昭和歌謡を「懐かしいな」と感じてつい聴きたくなる気持ちはわかりますが、「昔はよかったな」「あのころは……」なんて感傷に浸ることは、老いを自覚し、自分が年をとったことを痛感してしまうために、どんどん精神的な若さを奪っていきます。

だから、若いころによく聴いた音楽を聴いたり、若いときに訪ねた場所に行ったりして懐かしさに浸ることを、私は推奨しません。

音楽などは極力、「今の流行り」を耳に入れるほうがいいでしょう。

そうした理由から、楽器を再度練習するときも、昔よく演奏していた曲は避けて、今どきの新しい曲を演奏するようにすれば、意識を若く保てるのです。

「懐メロはNG」でも「若いころに観た映画や本はOK」である理由

懐メロはNGですが、昔に読んだ本や、過去に観て感動した映画を、年をとった現在もう一度体験してみることは、おすすめです。

一度読んだ本や観た映画を再び味わったところで、面白くないのではないか?

いえいえ、そんなことはありません。映画や本の場合は、印象的な個所は覚えていても、ほかの部分を憶えていないことがほとんどでしょう。

懐メロとは何が違うの? 音楽は感情に訴え、当時の感傷的な気分や、もう戻ってこない青春や切なさをよみがえらせがちであるのに対して、本や映画のいいところは、ただ「懐かしいな」では終わらないところです。

夕暮れ時に窓際で本を読むシニア女性
写真=iStock.com/xijian
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もちろん、読んだり観たりした当時の感情を呼び戻されはしますが、それよりも今の視点で新しい学びや発見、感動を得ることのほうが圧倒的に大きくなります。何度読んでも何回観ても、その都度その都度、新しい発見や学びを得られるのです。

「あのときは理解できなかったけれど、今ならこの登場人物の判断が正しかったことがよくわかる」「そうだ、こうしたやり方もあったのを忘れていたな……」などなど。

変に感傷的になりすぎずに、当時の自分の発見や学びの感覚を現在の自分に呼び戻しながら、さらに新たな発見や学びが上書きされていくので、「若返り」には効果的な影響を及ぼします。