思いどおりにはいかなくても、足搔きまくる
軍人としての輝かしい功績に比べたら、老後にマッカーサーが成し得たことなど、些細なものにすぎないかもしれません。
それでも、大人しく引退してしまったら、本当に自分は「ただ消え去る」だけの人間になってしまう。マッカーサーは「だから、決して理想を放棄しない」と誓い、疑念や恐怖心、そして絶望が心を支配しないように、信念を持ち、自信を持ってできることをすることで、彼は人生に希望を見出そうと挑戦し続けました。
そうやって老いと戦いながら、人生に生きる意味を見出そうとした彼の努力は、私たちに大切なことを教えてくれているような気がします。
「ただ黙って老いに任せていれば、人生は尻すぼみになっていくだけ。たとえ思いどおりにはいかなくても、足搔きまくることで、人生はいくらでも明るく楽しいものに変わっていく」ということを。
そしてこれはすでに、医学的・科学的に証明もされています。
だから、決して夢や希望を失ってはいけません。
ハーバードの実験「若い自分になりきることの驚きの効果」
ハーバード大学の心理学者、エレン・ランガー教授は、1981年に「反時計まわりの実験」と呼ばれる検証実験の結果を発表しました。
この実験は、70代後半から80代前半の男性8人を、内装を1959年当時の状態にすっかり改装した修道院の中で、5日間の共同生活をさせるというもの。
部屋の家具や装飾品、テレビのニュースや番組、音楽、昔の個人的な写真などの小物に至るまで、ありとあらゆるものが、「今は1959年だ」と錯覚を起こさせるように設えられていました。
1959年といえば、被験者たちにとっては、まだ40代か50代のエネルギーに満ちあふれていた時期です。
しかし、この実験の目的は、「当時の思い出に浸りましょう」ということではありません。「考え方の変化」、つまり、「自分は若いのだ、という思い込み(気持ち)」が、老化のプロセスに影響するかしないかを調べることです。
そのため、ランガー教授は、被験者たちに1959年当時の若い自分になりきること、そして当時の出来事を、まさに今現在起こっているかのように話すよう指示しました。
さらに、被験者たちに心の底から自分が40代、50代であると思い込ませるために、彼らが現在の自分の姿を直視しないですむよう、その実験部屋から鏡など、実際の年齢を想起させるものをいっさい除去しました。
この実験は、イギリスBBCでも放映されています。