日米金利差縮小の年

米国金利の下落と日本金利の上昇も注目点です。米国のインフレ率は3%程度で落ち着きを見せています。米中央銀行(FRB)としては、2%程度までもっていきたいところですが、政策金利(短期金利)が5%以上のままでは、経済に悪影響が出かねないので、今年は、徐々に金利を下げると予想されています。1年で1%程度金利を下げ、短期金利は4%程度となる可能性があります。

一方、日本は、2%台までインフレ率は落ちついてきましたが、それでも短期の政策金利はマイナスという「異常」な状況が続いています。金融引き締めではなく、金融正常化が強く望まれます。植田和男日銀総裁の手腕が試される年でもあります。

また、日米金利差縮小への思惑から、ドル・円レートも140円台を中心にしながらも、大きく動く可能性もあります。米国経済は引き続き堅調ですが、予想よりも強い場合には、米金利が下がりにくいとの思惑からドルが買われ、逆の場合には、円が買われるという構図です。米国経済は、高い確率でソフトランディングするものと思われます。

中国経済が心配

先ほども述べたように、とくに日本の製造業は中国経済の影響を受けやすいのですが、中国経済が変調をきたしています。その状況が悪化するかに大きな注意が必要です。

まず、中国の不動産バブル崩壊懸念です。大手の一部がデフォルト(債務不履行)を起こしつつあります。不動産市況も軟化を続けています。さらには製造業の供給過剰も指摘されています。

【図表】中国の消費者物価(前年比、%)

その影響もあり、中国では、「経済の体温計」と言われる消費者物価が下落し始めています。図表2は中国の消費者物価(前年比)を表したものです。2023年1月には、2%を超えていた消費者物価上昇率ですが、このところは前年比マイナスが続いています。11月はマイナス0.5%まで落ちています。日本はじめ、韓国や台湾などが、2から3%台であることと比較しても異常な物価の動きです。それほど経済は悪いということです。

筆者が代表を務めるコンサルティング会社のある顧客に中国で事業を展開する企業があります。その業績を見ていても23年後半からはあまりよくない状況が続いています。ゼロコロナ政策を解除していてもこの状態なのです。

今は、不動産バブルが崩壊するかどうかの瀬戸際だと筆者は見ていますが、もし、本格的に不動産バブルが崩壊すれば、中国経済が大打撃を受けることは、バブル崩壊を経験している私たちから見れば大きな懸念材料です。

中国では、マンションなどを買う際には、完成前にお金を先払いするのが通常ですが、お金だけ支払ったものの、業者の資金繰りのせいでマンション工事が中断している事例も多く、社会問題となっています。

中国の建設現場
写真=iStock.com/zhangxiaomin
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また、中国では、「シャドーバンキング」と言われる、日本では少し分かりにくい銀行以外がお金を貸す金融システムがありますが、バブルが崩壊すれば、通常の銀行だけでなく、シャドーバンキングに関係の深い地方政府などが大きなダメージを受けると言われています。もちろん、個人の金融資産にも影響が出ます。日本でインバウンドの観光客が急激に回復しているものの、韓国人や台湾人などが中心で、中国人観光客がそれほどの回復を見せない裏には、中国経済の状況が関係していると考えられます。

また、日本同様の少子高齢化が進む中国での長期的な成長鈍化にも注意が必要です。