経済の体温計が異常値を示す中国経済
消費者物価上昇率(インフレ率)は「経済の体温計」と呼ばれます。図表1は、中国、日本、米国、ユーロ圏、台湾、韓国の上昇率です。一目見ただけで、中国だけが異常値だということが分かります。極めて低いのです。
米国は3%台、日本とユーロ圏(通貨ユーロを使っている国20カ国)、台湾、韓国は2%台ですが、中国だけが、ここ半年ほどはゼロかマイナスという状況です。どう考えても異常です。
日本ではコロナがほぼ収束に向かっていることもあり、インバウンドの観光客がコロナ前の2019年並みに回復していますが、その中で団体客が来ない中国人だけはコロナ前の水準を大きく割り込んでいます。中国政府などの意向もありますが、経済が悪いことも一つの要因です。
私の会社がコンサルティングしている顧客の中には中国でビジネスを行っている会社も少なくありませんが、一部の企業の中国関連では、このところの収益が以前ほどではないところも出てきています。
中国経済がおかしいのです。
不動産バブル崩壊
最近、香港の高等法院(高裁)が、中国不動産大手の恒大集団の法的整理を決定しました。恒大集団は2021年にデフォルト(債務不履行)を宣告されていましたが、「債務弁済が不能な状態は議論の余地がない」として清算命令を出したのです。
米国の投資家などが、中国本土ではなく、比較的裁判プロセスに透明性の高い香港を選んで提訴したことをうけたものでした。恒大集団は2023年6月末時点で2兆3882億元(約49兆円)の負債を抱え、6442億元の債務超過の状態でした。
中国ではこのところ不動産価格の下落が顕著です。GDPの30%程度を不動産関連が占めているとも言われていますが、不動産不況に陥ったことが、景気の低迷をもたらしています。
そのこともあって、中国の株式市況は軟化しています。とくに上場している民間企業の株式時価総額は2年半前と比べてなんと6割減です。中国では国有企業や国家が関与している企業の比率が上場企業でも高いのですが、それを除いた民間企業の株価は大きく下げているのです。