対外的に圧力

そういう状況のもと、先に述べたように、香港で恒大集団に対する法的整理命令が出たのです。恒大だけでなく、大手不動産会社は同様の危機に瀕しています。こういった状況で、中国政府の出方に注目が集まります。

もし、不動産バブル崩壊となれば、大きな衝撃が中国経済に及ぶことは間違いがありません。そうした意味では、中国政府としては、恒大集団などを延命させる措置を取る可能性があります。

しかし「共同富裕」を大命題としている習近平政権にとっては、ある意味政策矛盾となる可能性もあります。富裕層を優遇することとなりかねないからです。難しい選択を迫られるわけですが、いずれにしても経済が低迷していることは間違いありません。

もちろん、中国政府も景気浮揚策を模索していますが、今のところは効果が薄く、先に述べたように、物価の下落や株価低迷にさらされています(この原稿を書いているときに1月の中国の物価が発表され、図表1にもあるように前年比でマイナス0.8%でした)。

こういう状況で懸念されていることは、中国が対外的活動に活路を見出そうとすることです。これまでは、多民族国家での貧富の格差をはらんだ難しい政策運営を、経済成長を求心力とすることでなんとか国家を維持してきたのですが、経済成長がおぼつかないとなると、他の求心力を求めることとなります。国民が政権を支持し、大きな不満を持たないようにする手立てが必要になるのです。

それが「対外進出」です。以前から、南沙諸島での問題でフィリピンとの軋轢が生じていますが、台湾への圧力がさらに強まることは容易に想像できます。沖縄の尖閣諸島をめぐっても日本は今度さらに神経をすり減らされるケースが増えるかもしれません。

釣魚島沖の領海をパトロールする中国沿岸警備隊
写真=iStock.com/IgorSPb
※写真はイメージです

習近平氏にとって台湾統一は悲願で、「武力行使も辞さない」とまで述べていますが、反中国派の頼清徳氏が新総統に選ばれたことから、さらに台湾に対する圧力が高まることとなります。

中国による武力行使は米国の介入を招く可能性があり、中国政府としては慎重にならざるをえませんが、経済の低迷が続く、あるいは、不動産バブルが崩壊するということになれば、海外に活路を見出す動きを活発化させるおそれは十分にあります。

台湾有事となれば、日本も経済的にも軍事的にも巻き込まれる可能性は低くはありません。今後の中国経済や習政権の動きに注意が必要です。

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