日本経済の活性化に男女格差解消は不可欠

日本政府も女性の才能を活かすことに熱心である。13年に閣議決定した日本再興戦略において、女性の力を「わが国最大の潜在力」として成長戦略の中核に位置づけ、保育所定員を72万人増やすなど、女性の労働参加率を引き上げるためのさまざまな政策を展開した。

その結果、第2次安倍政権時代の8年間で、30代以下の既婚女性を中心に、女性の就業率は55.9%(12年)から69.6%(20年)へと大きく上昇した。しかも、その上昇分のほとんどは正規雇用による増加であった。

とはいえ、自民党の一部に残る男性優位の価値観に影響されているのか、政府は特に税制で男女格差を残す制度を温存している。パート・アルバイトで働く人の年収が130万円以上になると、税額控除や国民年金や国民健康保険料の支払いにより手取り収入が減ってしまうため、女性の働く時間を制約する「130万円の壁」がある。これは事実上、女性が一定以上働かないことを政府が後押ししている制度にほかならない。このような税制は一刻も早く廃止すべきである。

街を見つめる男女のワーカー
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夫婦別姓をめぐる議論では、最高裁は現行の制度に違憲性はないと判断した。「形式的にはどちらの姓をとってもいい」という言い訳があるのかもしれないが、働く女性にとっては結婚するとき、姓の変更がさまざまな面で大きな負担になる。こうした制度がなかなか変革できないことは、昔ながらの男性中心主義的な考え方の裁判官がまだ多いことを示している。他方、トランスジェンダーの性別認定の条件として断種手術を課す法律を裁判官全員で違憲とした判決は、日本の将来に希望をつなぐものと思いたい。

ある国立大学の教授がこのようなことを言っていた。「今の男子学生は、どこに就職すれば出世コースに乗れるかと考えて、既存の世の中の仕組みに頼ろうとする。むしろ女子学生のほうが、自分で起業するとか、みんなが気が付かない新機軸で新しい経営を試そうとする」

本当にそうであるかはともかくとして、今、日本経済に最も必要なのは、そのような態度ではないだろうか。男女格差の解消は、日本経済を活性化させるために必須の条件である。

(構成=川口昌人)
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