日本の共働き世帯は、子の小学校進学で子育てと仕事の両立が困難になる「小1の壁」にぶつかりやすい。ファイナンシャルプランナーの加藤梨里さんは「これをきっかけに仕事を辞める人は多く、日本全体にとって損失が大きい。子どもを学童施設に入れれば解決という単純な問題ではない」という――。(第2回)

※本稿は、加藤梨里『世帯年収1000万円』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

桜を見ているランドセルをしょった小学校
写真=iStock.com/nikoniko_happy
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共働きを諦める「小1の壁」とは

未就学児の頃は時間管理や体力面でかなりの負担と不安に苛まれることがありますが、数年たって小学生になると、子どもが風邪をひく回数も減ってきて、共働きでの子育てもなんとかなるのではないかと思い始める人も多いでしょう。

そんな希望もつかの間、子どもが小学生になると、朝から夕方まで、長期の夏休みや冬休みもなく子どもを預かってくれる保育園がいかに恵まれた環境であったかを痛感することになります。

未就学児のうちはなんとかなっていたはずなのに、小学校に上がった途端どうにもならずに共働きでの子育てを諦めてしまう。それが「小1の壁」です。

2023年3月、「#学童落ちた」というハッシュタグがツイッターのトレンドに入りました。前述の「保育園落ちた日本死ね」から7年経ち、今度は「学童落ちた」のトレンド入り。多くの働く親たちが溜め息をもらしたことでしょう。

時を同じくして岸田首相は、公設の学童である放課後児童クラブの待機児童が1.5万人いることについて言及し、「待機児童解消を目指し、『小1の壁』の問題にも向き合っていく」と発言しました。

このように、新たな社会問題となりつつある「小1の壁」ですが、ただ施設が増えれば解決するという単純な問題でもなさそうです。「壁」の本当の原因はどこにあるのでしょうか。

学童に入れればOKではない

小学生になると下校時間が早く、入学したての1年生はお昼前には帰ってきます。2学期以降になると午後の授業が増えてきますが、それでも3時頃には下校するのが一般的です。

保育園のように毎日、朝から夕方まで子どもを学校に預けることは原則としてできません。かつての共働き家庭には自分で鍵を持って親が留守の自宅に帰宅する「カギっ子」が多くいましたが、昨今は防犯上の観点から特に低学年の子どもに一人で留守番をさせることは少なくなりました。

そのような共働き家庭の子どもたちのために、上述の学童保育施設(放課後児童クラブ・育成室)があります。学校から子どもが直接学童へ行けば日中に一人で帰宅することはありません。多くは校内に設置されているか、離れていても学童の先生が放課後の時間に合わせて学校へ迎えに行ってくれます。

公設の学童でも基本的には下校後から17時~18時30分前後まで過ごすことができるので、利用すれば保育園時代とほぼ同じように、親がフルタイムで仕事をしていても自宅外に子どもの居場所を確保することができます。

利用時間中に勉強の時間が設けられている施設も多いので、宿題を済ませてから帰宅させることも可能です。