「親米派政権」誕生を阻止したい習近平
【筆者】台湾統一を目指す中国の習近平指導部にとっては、頼氏と蕭氏のペアが総統と副総統になって親米派政権が誕生することだけは是が非でも避けたいはずです。
11月、国民党と台湾民衆党との間で候補を一本化しようとした動きがありましたが、これも、中国の意を受けて、親中派の馬前総統が動いたと言われています。今回の総統選挙への中国の関与をどう見ていますか?
【郭氏】今回の総統選挙では、中国は常に国民党と連絡を取っているはずです。中国はこの選挙を自分のこととしてとらえていると思います。
毎日毎日、「台湾の選挙はどうなった?」「候氏の支持率は上がったか?」と気にしているはずです。この選挙は、民進党vs中国の戦いでもあるんです。
2024年は世界が動く選挙イヤー
来たる2024年の国際情勢は、台湾総統選挙で幕を開ける。蔡英文総統は、11月30日、ニューヨーク・タイムズのインタビューで、「中国の指導部は国内問題に『圧倒』されているため、今は台湾への侵攻を考えるときではない」との見方を示している。
確かに、国内経済の低迷、政治の腐敗、そしてイタリアが、習近平総書記が主導してきた巨大経済圏構想「一帯一路」から離脱しそうな状況を思えば、当面は、台湾侵攻どころではあるまい。
とはいえ、頼氏が勝てば、台湾への圧力はさらに強まり、数年以内に台湾有事が起こる可能性が高まって、その際は、沖縄本島なども危うくなると筆者は見る。
日本では、岸田政権が行き詰まりを見せ、「退陣」の2文字が現実味を帯び始めている。韓国でも、来年4月の総選挙(1院制の国会議員選挙)しだいで、日米と共同歩調を取る尹政権の足元が揺らぐ恐れがある。
また、肝心のアメリカも、11月に行われる大統領選挙でトランプ氏が返り咲くことになれば、対中政策や他の民主主義国家との関係に影響が及ぶことになる。
それだけに、選挙イヤーの口火を切る台湾総統選挙は注目なのだ。台湾には、日本のような期日前投票制度がない。そのため、3候補の陣営は投票直前まで熱い選挙戦を繰り広げることになるが、その結果を受けて、中国が頭を抱えることになるのか、逆に高笑いをすることになるのか、日本にも影響が及ぶ選挙として、台湾の2000万人近い有権者の判断に注目したいものだ。