河野談話がある限り不法行為の有無は争えない

それでは、不法行為があったか、なかったかを裁判の争点にできるのかといえば、河野談話を破棄しない限り無理である。日本政府が、不法行為はあったと認めているのに、このことを裁判の争点にはできない。

では、河野談話を破棄できるのかといえば(私は以前からそう主張しているが)これまで歴代の政権がずっとこれを継承してきたのに、なぜ今になってそれを変えるのか十分な説明をしなければならなくなる。政府はそれをしないだろう。それをしたときの、韓国政府と世界世論の反応のほうを恐れているからだ。

安倍晋三首相(当時)が破棄を試みたときも、アメリカ、カナダ、オランダの下院、欧州議会がその動きに対する非難決議を可決している。

とはいえ、司法と行政は別である。韓国政府は、依然日本に対して友好的姿勢を変えていない。徴用工裁判のケースのように、裁判で賠償命令が出ても、韓国政府が日本政府に代わって賠償するという可能性はある。また、日韓請求権協定で日本は一括して経済協力金と借款を韓国に出したのだから、個人への賠償は韓国政府がすべきであるといえる。

いずれにしても北朝鮮が軍事衛星を打ち上げ、軌道に乗せた現在、日米韓が一致協力してこれに対処しなければならない。これには東アジアの安全保障がかかっている。日韓関係をこの問題で悪化させるのは、日米韓にとって得策ではない。過去をなおざりにしてはいけないが、未来に前向きに取り組むことはもっと重要だ。

デスクの上にミニチュアの日章旗と太極旗
写真=iStock.com/MicroStockHub
※写真はイメージです
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