実習生から高額な手数料を徴収して日本へ送る

実習生の送り出し国、また日本以外で出稼ぎ先となる国々では、日本をはるかに上回るペースで賃金が上昇している。そこに昨今の円安も追い打ちをかけ、出稼ぎ先としての日本の魅力低下はいちじるしい。

とはいえ、少なくともベトナムでは、依然として日本側の「買い手市場」が続いているようだ。だからA社は、キックバックの金額まで明かし、必死で実習生を売り込んでいる。

キックバックの出所は実習生だ。彼らから送り出し業者が徴収した手数料の一部が回される。

手数料の金額は、国によって大きく異なる。フィリピンのように徴収を原則禁じる国がある一方で、高額な手数料が定着している国もある。最たる例がベトナムだ。

出入国在留管理庁が昨年7月に公表した調査によれば、ベトナム人実習生が来日前に母国の送り出し業者と業者以外の仲介者に支払った費用は平均約69万円と、調査対象となった6カ国の実習生で最も高かった。ベトナム人の次に多いのが中国人で約59万円、最も少ないのがフィリピン人の約9万円だ。

ベトナム紙幣
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「200万円払えば日本に行ける」

「69万円」でも安くはないが、実際には100万円以上の手数料を払っているベトナム人は多い。関東の監理団体で働くベトナム人スタッフが言う。

「手数料はすべての職種で同じではない。仕事が大変で、ベトナム人も嫌う建設業などでは手数料が50万円以下のケースもある。特に建設業は実習生のニーズが高いので、監理団体にキックバックを支払う必要もない。でも、製造業のように人気の仕事だと、手数料は100万円を超えることが多いですね」

業者によっても手数料の違いが大きい。A社からメールを受け取った監理団体幹部はこう話す。

「うちがA社から受け入れたベトナム人実習生には、200万円の手数料を払っていた子もいた。別の送り出し業者経由で来日したベトナム人の手数料が100万円だったと知り、ショックを受けていましたよ」

手数料をボッタくるような業者になど頼らず、なぜ他の業者を使わないのか──。日本人の感覚では、そう思えてしまう。だが、日本の常識はベトナムでは通用しない。ベトナムは賄賂が蔓延まんえんする国で、手数料には「定価」がない。そして実習希望者たちは「本当に日本で働けるのか」との不安を抱えている。

「200万円払えば日本に行ける」

と業者に持ちかけられれば、従ってしまう者がいるのである。