お住まいは「江戸城奥深く」のままでいいのか

私は、皇居や皇室施設をオープンにして有効利用することには大賛成だ。かつて、京都御所や桂離宮、宮内庁の管理下にない京都迎賓館ですら観光客はほとんど入れなかった。

だが、安倍内閣時代に菅義偉官房長官のイニシアチブで開放方針が採られ、ほぼ完全オープンになった。東京でも迎賓館に入りやすくなり、皇居乾通りの見事な桜の並木の花見も可能になり、桂離宮は有料(18歳以上は1人1000円)で参観できるようになった。

皇居界隈の施設の管理主体は、宮内庁や環境省などさまざまだが、いずれにしても国有財産だ。それならば、国民も楽しめるようにし、また、経済的・財政的に有効に使うべきなのは当然だ。現在のように、人数制限のある皇居一般参観だけではもったいない。

私は、究極的には、天皇陛下が江戸城奥深くにおられることはやめて、京都にお帰りになるかどうかは別としても、国民に近い所に住まわれるほうがいいと思う。新宮殿は当面、現在の施設を使えばいいが、かねて提案しているように、東御苑から馬場先門周辺は江戸城に戻すのがいいだろうし、その一環として天守閣復興計画を進めることもけっこうなことだ。

低コストで天守閣を再建することは可能

再建費用に数百億円はかかるが、観光面でも都市景観でも価値はある。木造にする必要はない。江戸城の天守閣は、安土城や豊臣時代の大坂城と違って、そこに住むものではなく、将軍も登ったことがないはずで、単なる飾りである。それならば、外観復元とエレベーターで上がる展望台で十分だ。

倉庫の内部など忠実に復元しても意味がない。木造にして喜ぶのは、木造建築を得意にする業者や研究者などだけだ。伝統建築の技法を生かすためなら、もっとコスパのよい建築復元はいくらでもある。数百億円よりも少ない費用で実現できるだろう。

西の丸や吹上御苑には、明治宮殿(日本の歴史において江戸城より重要な歴史の舞台だ)を復元し、昭和天皇の住まいは博物館化して、庭園も国民が気軽に散策できる公園として整備すべきだ。

皇居前広場など外苑は、単なる広場でなく、都心の一等地として経済的にも合理的な活用を図るべきだ。閲兵式のような使い方は今はないだろうから、一部はパレードなどする祝祭空間にして、残りは民間に売却して財政再建に使ってもいい。

このように、東京のど真ん中に位置する皇居スペースをどのように活用するか、アイデアはいくらでも出てくる。今回の江戸城天守閣の再建計画が、皇室施設のあり方も含めて、国民全体で議論するきっかけになることを期待している。

都心の航空写真
写真=iStock.com/maruco
※写真はイメージです
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