信頼を築く

新リーダーにとって、より堅固な基盤になるのは信頼である。「まだ誰もあなたを知らない就任早々の時期に信頼を獲得することは、新しいポジションでの成功に欠かせないことだ」と、シアンパは言う。

「第一印象は、早々に信頼を築くためにきわめて重要だ。だから、落ち着いていること、自分のどの面を前面に出すかを厳選すること、できるだけ部下と接すること、話すときは相手の目を見ること、知らないことは知らないと言うこと、がなおさら重要になる」

『Right from the Start』でシアンパとワトキンスは、新リーダーの信頼を高める6つの特質を挙げている。

[1] 厳しい要求をするが、満足することも知っている。
[2] 積極的に人の話を聞くが、親しくなりすぎない。
[3] 断固としているが、物わかりがよい。
[4] 焦点を絞るが、柔軟性がある。
[5] 積極的に行動するが、それによって混乱を招くことはない。
[6] 厳しい決断を下すことも辞さないが、それでいて人間味がある。

シアンパとワトキンスの言う、一つひとつの行動の中の「根本的な緊張」を維持していくのは簡単なことではない。何をするにしても、相対立する要件をうまく折り合わせなくてはいけないのだ。

就任早々の会話が在任期間にも影響

ガースナーはIBMを凋落させないためにダウンサイジングを行ったが、必要な行動のすべてを迅速に、かつ人間味のあるやり方で行うことによって組織の心理的な傷を最小限に抑えた。

新しいポジションでのコミュニケーションには、絶妙のバランスが必要だ。新任のリーダーは、いつ聞いて、いつ話せばよいか、いつ情報を集め、いつ指示を与えればよいかを見極めなくてはいけない。就任早々の時期に慎重に熟慮しながら会話を交わしていくことが、新リーダーの在任期間を定め、往々にして成否を決めるのである。

(翻訳=ディプロマット)