仏教は宗教ではなく哲学である
私は本来、組織に属するのは苦手なタイプのため、得度を受け、その宗派に属することに初めは躊躇しました。しかしながら、それ以前に私は小島雅道上人に師事したいと思ったのです。私の職業上、お悔やみのマナーを伝える人としてその道の学びを深めたいと思っていたころ、小島雅道上人は「仏教は宗教ではなく、哲学である」とおっしゃったからです。
私が考える“マナー”について「西出さんの伝えるマナーは、哲学の一種だね」と言われることがあります。そうであれば、仏教の教えは、私の伝えるマナーと通ずるものがあるのではないか、と思いました。そして師匠の小島雅道上人より「古いとか、時代遅れでもない、人として大切な、敬う心を忘れないということを、これからもマナーを通じて、たくさんのかたに伝えてほしいです」とのお言葉をいただき、還暦を目前にさらに精進しよう、と決意しました。
仏教にもいくつかの宗派があり、焼香の仕方などがそれぞれに異なります。先述の通り、同時に正しいマナーを知ったからと言って、それがどんなときでも正解ということはありません。TPPPOによって、マナーは変わります。だから状況に応じて、行動を決めるのは個人である、ということです。
「トンデモマナー」は諸説の1つにすぎない
本稿で紹介したマナーは、「トンデモマナー」、あるいは「謎マナー」などと言われていますが、じつは諸説の一つにすぎないのです。だから伝えられたマナーを型通りに実践するより、その意味を知識として知っておくことがまずは大切です。そうした知識をもとに、その場に応じて臨機応変に使い分けたり、その情報を自分なりにどう解釈し、自分にとり入れるのか否かを決めたりすることが、求められる時代になってきたのではないでしょうか。
さて、これまでマナーを巡る問題にあまり関心がなかったという人も、何かと騒がれているマナーの問題についてだんだんわかってきた、という人もいらっしゃるでしょう。また、これまでマナー講師に対して反感や嫌悪感を募らせてきた人にとっては、これまで明らかにされていなかったマナー講師をめぐる環境や実態を知る機会になり、少し見かたが変わったかもしれませんね。
本書の第3章では、そもそもマナー講師の仕事とはどんなもので、どうやって生計を立てているのかをお伝えしています。興味のある方は手に取ってみてください。