老年になったら「節制」「がまん」はマイナス

日本人は「節制やがまんは美徳」と考える人が多く、過剰に自分の欲や娯楽を制限してしまう傾向があります。

若いうちはたしかにそれがプラスに働くケースもあるかもしれません。

ストイックに自分に厳しくすることで、仕事面で大きく成長することもあるでしょう。あるいはその姿勢が、周囲の人、とりわけ地位が上の人から好感をもって受け入れられることもあるでしょう。

しかし70歳にもなれば、節制やがまんはマイナスになることがほとんどです。やりたいことをがまんし、ストレスを溜め込んだあげく、うつ病になったり、免疫力まで落としてしまっては元も子もありません。

風船を持ってパーティーを楽しんでいる高齢の仲間たち
写真=iStock.com/KatarzynaBialasiewicz
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食べたいものを食べ、たばこやお酒も好きなだけ…

私は、高齢医療の臨床の現場で、「70歳を過ぎたらやりたい放題」とすすめています。健康診断の数値に一喜一憂して食べたいものをがまんすることはおやめなさい、食べたいものを食べるとマインドリセットしましょう、と言っています。

食べたいものを食べないとストレスが溜まり、免疫力も落ちてしまいます。

たばこや酒についても、同じことがいえます。

たばこはたしかに肺がんのリスクを高めますが、70代になるまで肺がんになることなく過ごしてきた人が、70歳を越えて以降、たばこを吸う吸わないで、いったいどれだけ肺がんリスクに差異が生じるでしょうか。

実際、私が勤務した浴風会病院に併設された老人ホームでは、喫煙者と非喫煙者の生存曲線に差がありませんでした。

むしろたばこを吸うことでストレスを溜めずに人生を謳歌おうかすれば、がんの発症リスクを低くすることもある。そのようにマインドリセットすることが大事なのです。