※本稿は、和田秀樹『幸齢者』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
年をとって幸せになるためのマインドリセット
年をとって幸せになるには、また、充実した毎日を手にするためには、なによりこれまでの「考え方」を切り替えていくことが重要です。私はこれを「マインドリセット」と呼んでいます。
年をとってからもなお、若いころ、現役時代と同じものの考え方をしていると、結果として、自分を苦しめることにしかならないからです。
私がいま、最もマインドリセットが必要だと感じているのは「お金」です。
お金は使えるときに有意義に使おう
長年にわたり老人医療の現場で大勢の高齢者を診てきて、1つ気づいたことがあります。たとえば、ヨボヨボになる、歩けなくなる、寝たきりになる、認知症がひどくなる……といったことが起こります。そうなると、人間は想像以上にお金を使えなくなるのです。
自活が徐々に難しくなって、特別養護老人ホームや介護つきの有料老人ホームなどに入ることになったとしても、介護保険が利用できるので毎月の費用はおおよそ年金の範囲内に収まるものです。
そのとき、「無理して蓄えなんかしなくてよかった」「もっと人生を楽しめばよかった」「損した」という心情になる高齢者がたくさんいます。
だからこそ、マインドリセットをして、お金は有意義に使えるときに使ったほうがいい、心が満たされるような使い方をどんどんしたほうがいい、というのが、私からの提案です。
高齢者がお金を使うことで世の中がよくなる
お金はそもそも、「持っている」ことより「使う」ことのほうに価値があるものです。
お金を持っている人が偉いかのように勘違いする人がいますが、資本主義社会においては「お客様は神様」なわけです。つまり、「上手にお金を使う人ほど偉い」というのが正解です。