親子関係が「密すぎる」不幸

そうなると親は、「自分が死んだあとも子どもが困らないようにしてあげたい」という心理を働かせてしまい、「子どもにお金を残したい」となる人が多いのです。

高齢になればなるほど、じつは「お金を使っている人」のほうが幸せになれる面があるのに、子どもにお金を残そうとして、自分のためにお金を使えなくなる高齢者が想像以上に多いのです。

それとは逆に、「いままでこれだけしてやったのだから、子どもに介護してもらいたい」と、すっかり子どもに頼り切ってしまう高齢者もいます。親子の関係が密であるために、子どもの側も親の介護を引き受けてしまいます。

とくに親を引き取り、在宅介護をすることにした子ども世代の中には、そのために仕事をやめてしまう人が大勢います。現役世代は生活費や自分自身の老後のための蓄えが必要なはずなのに、親の介護を優先せざるをえなくなった結果、子ども世代が退職に追い込まれてしまうのです。

彼女の高齢の母親とビーチに沿って散歩に行く若い女性のリアビューショット
写真=iStock.com/Dean Mitchell
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「子離れ」をしよう

たしかに子どもは可愛いのです。可愛いのですが、「一生面倒を見なければいけない」「財産を残さなければいけない」、あるいは逆に、「老後は子どもに面倒を見てもらうべきだ」「そのために、子どもには嫌われないようにしないと……」といった思考をマインドリセットできないままでいると、自分の人生を子どもに隷属させることとなってしまいます。

その結果として、親も子も不幸な結末になってしまうことが起こりうるのです。

後悔のない人生を送るためにも、よい意味で「子離れ」をして、親は自分自身の幸せを考えて行動することが大事になってくると思います。

子どもに関してはもう少しドライに、「子どもは子ども、自分は自分」と割り切ること。これが、これからの時代においていっそう大切になってきます。そして、自分のお金は自分の幸せのために使ってください。

たとえ、子どもが定職につけないとか、うつ病になってしまうことがあったとしても、本来であれば、社会福祉によって面倒を見てもらうことが原則です。長年、納税者として税金を納め、社会の側もセーフティネットを整えているわけですから、あまりに何でもかんでも親が背負おうとしなくていい。そのことは知っておいていいと思います。

それが結果的に、子どもを自立に導くことになりますし、将来的に、子どもに老老介護をさせて“親子共倒れ”になるリスクを減らすことにもつながるのです。