70代以降を幸せに過ごすにはどうすればいいか。新著『幸齢者』を上梓した老年医療の専門家である和田秀樹さんは「日本ではがまんするイメージが強い『高齢者』という言葉を、幸せを感じながら後半生を過ごす『幸齢者』という呼び方に変えたい。70代になったら奔放なほど自由に生きたほうがいい」という――。(第1回/全5回)
※本稿は、和田秀樹『幸齢者』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。
高齢者は「ぜいたくが似合う年代」
15年前、モナコの映画祭に行ったとき、私はいまでも忘れられない光景に遭遇しました。映画祭を目当てに次々自動車で乗りつける高齢の男性たち。見れば、多くが高級スポーツカーのフェラーリ。それがまた様になっているのです。「格好いいなあ」と、心底うらやましくなりました。
ぜいたくなライフスタイルをさりげなく実行し、少しも嫌味がない。こういうことができるのは高齢になってからの“特権”なのかもしれません。
若者が高級車を乗り回していると、「どうせ親が金持ちで、遊んで暮らせる身なんだろう」「あぶく銭を稼いだ成金か」といった目でしか見られませんが、高齢者がごく自然にそれをやってのけると、「渋いなあ」と感嘆の声が上がります。
そう、高齢者は本当は「ぜいたくが似合う年代」なのです。
人生の「楽しさ」で考える
ところが日本では、そのようなぜいたくな暮らしぶりを実践する高齢者は少数派です。お金がないからではありません。心持ちの違いなのです。
日本の場合、たとえば退職金を2000万円もらいました、となったとき、「このお金は老後の蓄えにしないといけない」と考えて、全額を定期貯金に回す人がいまでも多いのではないでしょうか。
その行為自体は否定しません。否定はしませんが、でも、「40年間働いてきた自分へのご褒美だ」とフェラーリやポルシェを購入する人生のほうが、“楽しい”とは思いませんか。