死に至るまでに「2つの道」がある
当然のことながら、人はそれぞれ年齢も体型も違います。性格や考え方も違います。生活の環境や仕事も家族構成も違う。一人ひとりは、まったく違う人生を歩むまったくの別人です。
しかし、すべての人に共通することがあります。それは、全員が「やがて死んでいく」ということです。これだけは避けようがありません。
死に至るまでには、2つの道があります。1つは、幸せな道です。最期に「いい人生だった。ありがとう」と満足しながら死んでいける道です。もう1つは、不満足な道です。「ああ、あのときに」とか「なんでこんなことに」と後悔しながら死んでいく道です。
どちらの道を選びたいか? それは聞くまでもないでしょう。
最期に満足しながら死ぬために大切なこととは? 突き詰めるとそれは、たった1つに集約できます。老いを受け入れ、できることを大事にする、という考え方です。
これが「幸せな晩年」と「不満足な晩年」の境目になると思っています。
「ないない」で生きるか、「あるある」で生きるか
「幸せ」とは、本人の主観によるものです。つまり、自分がどう考えるかによって決まるものです。
たとえば、自分の老いを嘆き、あれができなくなった、これだけしか残されていないと、「ないない」を数えながら生きる人がいます。かたや、自分の老いを受け入れつつ、まだこれはできる、あれも残っている、と「あるある」を大切にしながら生きる人がいます。どちらの人が幸せなのでしょうか?
私のこれまでの臨床経験では、「あるある」で生きる人のほうが幸せそうに見えました。家族や周囲の人とも、楽しそうにしている人が多かったように思います。