メンタルが変わると、生き方が変わります。世の中が違って見えてきます。そうすれば、残りの人生がより充実したものになることは間違いありません。そうして70代にもなったならば、むしろ、奔放ほんぽうなくらい自由に生きたほうがいいと思います。

それが80代、90代を豊かにする秘訣です。

「70代の生き方」が後半生を決める

知的な面でも同じです。家に閉じこもって本を読むのではなく、外に出て、同年代の友人たちと議論したり、映画や演劇の感想を語り合ったり、あるいはブログやホームページのようなアウトプットの場を設ける。そのほうが、脳ははるかに刺激され、若々しさを保つことができます。

和田秀樹『幸齢者』(プレジデント社)
和田秀樹『幸齢者 幸せな老後のためのマインドリセット』(プレジデント社)

もちろん、それでも生物としての“老い”には逆らえません。

80代後半になれば、どんな人でも筋肉の衰えを自覚しますし、半数の人に認知症の症状が現れます。体の頑張りも利かなくなっていきます。

「そのようになる前」が大切です。人生の分岐点はまさに“ここ”にあります。

たとえば80代になっても、知的好奇心を失うことなく、多彩な人間関係を保っている人がいます。そういう人は、70代を自由奔放、活力いっぱいに過ごした人です。

定年後の60代、あるいは70代をどう過ごすかは、ことほどさように人生の後半生を大きく左右する重要な選択になるのです。

80歳を越えてもバイタリティ溢れる人々の共通点

人間は年齢を重ねていくうちに、脳の前頭葉が衰えていきます。

前頭葉の機能が衰えると、思考が鈍くなってしまううえ、無関心や意欲・創造性の低下を引き起こします。さらに新規のシチュエーションへの対応能力、感情コントロール能力も落ちてきます。

でも前頭葉は、使い続けている限り、そう急激には衰えません。70代になったからといって自分にがまんを強いることなく奔放に生きていけば、前頭葉が衰えるスピードを遅らせることができるのです。

じつは前頭葉は、40代から萎縮いしゅくが目立ち始めます。早くも40代のうちから意欲や創造性をなくしてしまう人が世の中にはたくさんいる一方で、70歳、80歳を過ぎても画期的なアイデアを次から次へと思いつき、あふれんばかりのバイタリティで実現してしまう人も、現実に存在しています。

脳は使えば使うほど活性化し、年をとったからといってすべての人の前頭葉が衰えてしまうわけではありません。むしろ、意欲がある人は、それまでの人生経験を生かし、いっそう創造的な活動をすることも可能です。