秋元康から学んだ「ホメどころ」の見つけ方
「相手のことをホメようと思っても、ホメるところが見つかりません」というお悩みをいただくことがあります。
でも、ホメるところがひとつもない人間なんてこの世には存在しません。私たちは一人ひとり違う人間だからです。だからその「違い」をホメればいいのです。ホメるところが見つからないと悩む人は、「相手のいいところをホメないといけない」という固定観念にとらわれています。
これが間違いで、別に相手のいいところを見つける必要はありません。
その人の
①ほかの人と違うところ
②これまでのその人とは違うところ
をホメればいいのです。
たとえば、メガネをかけている人だったら「そのメガネ、ステキですね」でいいのです。自分で選んだメガネをホメられれば、うれしいと感じるものでしょう。
あるいは、ふだんはメガネの人がメガネをかけていなかったら、「あ、今日はメガネをかけてないんですね。爽やかな印象でいいですね」などとホメます。
ちょっとした変化にも気づいてくれて、しかもホメてくれれば、誰だってうれしいはずです。このときに大切なのが「観察力」です。相手のちょっとした持ち物に気づく、ちょっとした変化に気づく。これができると、ホメることが見つからない、なんてことはなくなります。私がこれがすごいと感じたのが、秋元康さんのエピソードでした。
結婚式のスピーチを頼まれていると考えてみよう
僕が作詞家、放送作家の秋元康さんとラジオで対談させていただいたときのことです。番組の途中で、交通情報を伝える女性アナウンサーの方が入ってきました。
そこで秋元さんは、急に私にこうたずねました。
「渡部、あのアナウンサーにプレゼントを送るとしたら、なにを選ぶ?」
「いや……、なにを渡せばいいか、ぜんぜんわからないですね。だって、いまさっき会ったばかりの人ですよ」
「よく見るんだ。彼女は限られた時間のなかで交通情報を伝えないといけないから、ストップウォッチを持っているだろ。でもあのストップウォッチ、ちょっと端が欠けているじゃないか。塗装が剥げてて、色がなくなってるだろ。だから、俺だったら海外製のストップウォッチを取り寄せて、それをあげるかな」
秋元さんは瞬時に相手の持ち物にも目を配らせ、ものすごく観察しています。これこそ、秋元さんがヒット曲を生み出し続けられる理由なのだと感じました。
秋元さんレベルの観察力を身につけるのは並大抵のことではありませんが、こうした観察力を鍛える方法はあります。誰かまわりでひとり選んで、「半年後、この人の結婚式のスピーチをしないといけない」と考えて接してみる、観察してみるのです。
結婚式のスピーチなので、相手のいいところを参加者の人たちに紹介しなければいけませんよね。だから、相手のことをしっかり観察して、いいところを見つけようとする意識が働くはずです。