しかし、脳が未発達な子どもはこのサインに気づきにくく、気づいてもそれを言語化する脳がまだ十分に育っていません。そのため、ある朝、突然起きられなくなるように見えるのです。

親の弱い部分を見せると子供の不安は和らぐ

オサムのような不安の強い子どもに対して、「もっとしっかりしなさい!」「もっと頑張れ!」などと言うことは絶対にNGです。「不安なんだね」と、まずは子どもの気持ちをそのまま受け取り、何が不安なのかを聞いてあげましょう。

子どもを注意深く観察して、「気分」「からだの反応」「行動」にかなりのストレスが表れていることがわかったら、無理をさせないように休ませてあげましょう。

「体育会系」の親御さんは、「からだが覚えるまで練習するんだ。そうすれば不安は消える!」といったような、「正論の根性論」をよく言うのですが、不安の強い子どもは、「自分にはそんなことできない」とより一層自信をなくしてしまいます。

本当は試合前に緊張したことなどなかったとしても、「お父さんも子どもの頃は、サッカーの試合前は緊張して足が震えちゃってさ。でもさ、頑張って練習したら、自然にからだが動いてくれたよ」などと、「子どもと自分は一緒である」という体験を伝えてあげましょう。

一見したところ完璧に見える父親が弱い部分を見せることで、子どもの不安は和らぎます。

サッカーをしている少年
写真=iStock.com/PeopleImages
※写真はイメージです

「ネガティブ言葉」を「ポジティブ言葉」に変換する

ところで、近年の脳科学研究では、同じことでも「ポジティブに捉えやすい脳」と「ネガティブに捉えやすい脳」では、前頭葉の反応が異なることがわかってきました。

その差異は免疫機能とも関連していて、ネガティブな脳の方がインフルエンザワクチンの免疫がつきにくいという報告もあるほどです。

私たちも、問題を抱えて来られる家族との関わりの中で、ポジティブな考え方を持っている親御さんの方が、トラブル改善の経過が良好であることを実感しています。

子どもも、大人も、物事をポジティブに捉える習慣をつけるために、「おかげさまで」という言葉を口癖にすることをおすすめします。

「おかげさまで」という言葉を日頃から意識的に口にし続けると、だんだん、「~のおかげでいい結果になった」と考えられるようになってきます。もしトラブルが起こったとしても、「おかげさまで、いいこともあった」「おかげさまで、大事なことに気づくことができた」とポジティブに脳が捉えるようになります。