ですから、職員が窓口で「あなたには受給する資格がありません」などと嘘を並べて、申請用紙を渡さず追い返されたとしても、便せんでも何でもいいので、受給を希望する旨を書き、役所に提出すれば生活保護は受けることができます。
万が一のことを考え、念を入れて内容証明で送れば間違いないでしょう。もしくは、弁護士に依頼するのも有効な手段です。実は、日本は生活保護が本当に必要なのに受給していない人がとても多い。給付水準そのものも先進国の中でもズバ抜けて低いのです。
では、生活保護を受けた場合、どのくらいの生活レベルが保障されるのでしょうか。
例えば、都心に住む高齢者夫婦の場合、生活保護支給額は月に18万円前後です。生活保護受給者は社会保険が控除されるので、実際は月に20数万円ほどの収入レベルと同程度の生活ができると考えられます。
一方、夫が平均的収入のサラリーマンで、40年間厚生年金を払い続けたとします。すると、厚生年金と夫婦の老齢基礎年金を合わせた額は、月に約23万円程度です。生活保護でも年金生活とそれほど遜色のない生活が送れるのです。
逆に、自営業などで国民年金にしか加入していなかったりすると、夫婦合わせても月の年金受給額は13万円ほどにしかなりません。これでは生活保護支給額のほうが7万円以上も多いことになってしまいます。
実は、年金を受け取っていても、生活保護は受けられます。年金だけではなく、アルバイトや派遣社員として給与を貰っていても、それが基準額を下回っているのであれば、生活保護を受ける資格になり、差額が支給されます。昨今、働けど働けど生活保護支給額程度の給与が貰えないワーキングプアなどが問題になっていますが、生活保護の仕組みを知らない人があまりにも多いのです。
若いうちから老後資金について、必要以上に不安を募らせる人が多いようですが、国家が破綻でもしない限り、いざというときには最後のセーフティネットがあることを心に留めておくと少し楽になるのではないでしょうか。
1967年、福岡県生まれ。大蔵省(現・財務省)に勤務。大蔵省退官後、出版社勤務を経てフリーライターに。ビジネスの裏側、歴史の裏側を検証した記事、書籍を多数発表。