メンタルを強くするにはどうすればいいか。ハーバード大学に務める小児精神科医の内田舞さんは「羽生結弦選手のような強くしなやかな考え方を持つには、他者に依存する『外的評価』ではなく自分自身による『内的評価』を育てた方がいい。そのためには自分の決断も行動も、それに伴う結果も自分で『所有』するオーナーシップを持つことが必要だ」という――。
※本稿は、内田舞『REAPPRAISAL 最先端脳科学が導く不安や恐怖を和らげる方法』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
フィギュアスケートのジャッジで羽生結弦が考えたこと
内的評価は、自分の中での頑張りや達成感、進歩しているとか成長していると感じること、生きがいを軸にした自分自身の評価のことです。
もちろん頑張れば頑張るほど成績も上がるということもあると思いますが、現実にはどうにもならないことも起こりえます。
フィギュアスケート選手(現在はプロスケーター)の羽生結弦さんがあるとき受けたインタビューで話していたことがとても印象的でした。
彼は2015年シーズン競技では世界最高得点を更新しつづけましたが、そこからさらに努力して、何年間も技を磨いてきました。
ジャンプも表現力も上達していることは明らかでしたが、試合でジャッジがつける得点につながらず、納得のいかない、思うようにいかないときがあったと言います。
その状況を踏まえて、誰かがつける点数ではなく、自分自身が満足する演技を観客と共有するためにプロスケーターになる決心をした、と話していました。
フィギュアスケートという競技は最終的にはジャッジの判断に委ねられます。ルールに従い、公平に審査しているジャッジの方が多いにもかかわらず、時には政治的な働きかけや主観、意図が入ることもあり、すべてが個人の努力や技術で決まらないところがあります。