強力な超音波を集めて熱エネルギーを与える治療法

今年3月、消費者庁の消費者安全調査委員会が、エステサロンなどでたるみやしわの改善を目的として行われている「HIFU(ハイフ)」について調査報告書を発表しました。調査報告書ではHIFUの施術によって、顔面の麻痺や、急性白内障、熱傷(やけど)などが起こった事例が報告されています。

HIFU(ハイフ)とは、「高密度焦点式超音波」の英語表記(High Intensity Focused Ultrasound)の頭文字をとったものです。体の内部の1点だけに焦点を合わせて強力な超音波を集めて熱エネルギーを与える治療法で、虫眼鏡を使って光を集めるイメージに例えられます。元々は前立腺肥大の治療に使われていましたが、美容にも応用されるようになりました。

肌は表皮層、真皮層、皮下脂肪層、SMAS層(筋膜)、筋肉層で構成されています。この中で顔の筋肉を支えるSMAS層に熱エネルギーを与え、いったん破壊し、再生を促すことで、引き締めようとします。肌がたるんでしまう原因の多くは、加齢によって真皮から肌のハリを保つコラーゲンやエラスチンが失われてしまうことです。そこでSMAS層に熱エネルギーを与えて破壊することで、コラーゲンやエラスチンの再生を促します。

「1万円でハイフ打ち放題」を謳うエステサロンも

従来のたるみ、しわ対策改善を目的とした美容医療は「フェイスリフト」や「糸リフト」など、外科手術が必要で患者さんの負担も大きいものでした。そんな中、HIFU施術は通常、手入れができない皮下組織にメスを入れることなくアプローチできることから、アンチエイジング対策として広まりました。

肌質改善やたるみ予防、小顔対策で始める人も増えており、若年化が進んでいます。最近は芸能人やモデルの方の「こういう施術をした」という発信がきっかけになるなど、SNSの普及で美容医療の敷居が下がっていることを実感しています。

HIFU施術が一般的になる一方、費用の安さをうたったエステサロンや美容専門のクリニックが増えていることも特徴の一つです。例えばエステサロンではトライアルキャンペーンと銘打って「小顔ハイフ30分打ち放題1万円」というメニューを見かけます。一部のクリニックでも、初回は5万円の施術で、回数を重ねるごとに費用が安くなるプランもあるようです。

私のクリニックでも2020年からHIFU施術を行っていますが、当院では1回の施術費用が初回トライアルが8万8000円、その後単回が11万円、3回コースが26万4000円です。施術を行うのは国家資格を有し、十分な知識と技術を持つ医師あるいは看護師です。また高出力で施術できるハイフ本体の機器代、チップなどの消耗品代もより高額なため、エステサロンよりも価格帯が高くなります。