解剖学の知識のない人間が行っていいものではない

今回の調査報告書では、HIFU施術は神経や血管の位置などの解剖学の知識を有する者が、機器の特性や施術方法を熟知して行う場合を除いては、人体に危害を及ぼすリスクが高いとして、厚生労働省に「施術者を原則医師に限定すること」を求めています。実際、施術には解剖学を熟知した医師が施術あるいは、施術のトレーニングを受けた看護師が、医師の指示の下に施術すべきと考えます。

また、現時点ではHIFUの機器が薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)上の医療機器に該当するかの判断が明確ではなく、国内には美容医療を目的としたHIFU機器で承認されているものはありません。

ただ、国内未承認の医家向け医療機器を医師個人の自己責任で個人輸入することは医薬品医療機器等法で認められており、先述したように私のクリニックでもアメリカやヨーロッパ、韓国で承認を受けている機器を国内販売代理店を通して入手しています。

HIFU施術を行っているクリニックでは、医師がこのように海外で承認された機器を導入しているのが現状です。当院でも機器については日本人に対する安全性を最優先に機器の選定を慎重に行い、医師・看護師のトレーニングをしっかり行った上で患者さんに施術しています。当然ですが、メンテナンスについても購入した業者のアドバイスの下でしっかり行っています。

肌の状態を気にする女性
写真=iStock.com/kazuma seki
※写真はイメージです

クリニックであってもリスクはゼロではない

トラブルの増加に伴い、今後は施術者や機器についての法整備が進むことが期待されます。しかし、HIFUの施術がクリニックの医師に限定されれば安心というわけではありません。調査報告書でも約6割の利用者が施術のリスクを認識していなかった実態が記されていますが、HIFU施術に限らず「リスクがゼロの施術はない」ということを改めて理解すべきでしょう。

実際、調査報告書ではエステサロンだけでなく、医療機関である美容クリニックでの事故も報告されています。私のクリニックでも導入後3年間で、HIFUの施術で2人の患者さんに数カ月の間、茶色い跡形が残ってしまうようなやけどをさせてしまったことがあります。

その時は塗り薬や飲み薬で跡形を薄くする治療を行いました。本来ならやけどを患者さんにさせてしまうのはあってはならないことです。やけどさせてしまった後に院内で再発防止のために再度研修を行いました。