なぜ顔面麻痺や白内障が起きるのか

なぜHIFU施術で顔面の麻痺、急性白内障などのトラブルが起こるのかというと、SMAS層の近くに多くの神経が通っているため、照射するポイントを誤り、神経を傷つけてしまったり、目の近くを施術してしまったりしたことが原因だと考えられます。また、やけどについては、機器の密着が甘いと、通常より浅い部位に焦点が合ってしまうため、皮膚表面がやけどしてしまうために起こってしまいます。

今回の調査報告書は「エステサロン等での事故」となっていますが、現在、HIFU施術が行われているのは、エステサロンのほか、当院のような美容医療も行う皮膚科専門医・形成外科専門医のクリニック、美容専門のクリニック、内科・眼科などの皮膚科・形成外科以外のクリニックなどです。

当院や他の多くのクリニックで使用している機器は「高密度焦点式」で、医薬品・医療機器等法の下、医師個人の自己責任で個人輸入した医家向け医療機器です。一般的に医療用HIFUとよばれているのはこの機種を使った施術です。

「医療行為」なのか明確な判断がない

一方、エステHIFUとよばれているものは、「蓄熱式」という熱エネルギーの加え方をする機種が多いようです。「蓄熱式」では比較的弱い超音波を面で照射し、徐々に熱エネルギーを蓄積させて、肌内部の温度を上げていきます。出力自体は医療用の「高密度焦点式」ほど強くなく、また出力が強くなりすぎないよう制限がかかっていることも多いため、仕組み上、効果がマイルドな反面、やけどのリスクが少ないと考えられていました。

しかし、調査報告書ではHIFU施術の実態として、医師のいないエステサロンなどでも照射出力の高い機器が使用されていることが指摘されています。

医療機関であるクリニック、エステサロンの両方で行われている代表的な施術に脱毛があります。脱毛の中でも永久脱毛の効果を得られる高出力の医療脱毛レーザーの照射については医療行為にあたると医師法で定められており、医療機関で医師または医師の指示を受けた看護師のみが行わなければいけません。

しかし、HIFUに関しては施術が医師法における医療行為に当たるかは明確な判断が示されていないのが現状です。