アルメニアの首都エレバンでは、隣国アゼルバイジャンが係争地ナゴルノカラバフを攻撃しても何もしなかった「同盟国」ロシアに対し市民の怒りが爆発した。市内各地を出発したデモ隊がロシア大使館前に集結して反ロシアのシュプレヒコールを上げた。
アゼルバイジャン軍は9月19日、アルメニア人勢力が実効支配するナゴルノカラバフで「対テロ作戦」と称する軍事行動を開始したと発表。この地域はアゼルバイジャンとアルメニアの間に横たわる山岳地帯で、国際的にはアゼルバイジャンの領土とされているが、約12万人の住民の大半はアルメニア人で、「アルツァフ共和国」として一方的に独立を宣言している。
アルメニアとアゼルバイジャンは長年、この地の帰属をめぐり紛争を繰り返してきた。直近では2020年に大規模な軍事衝突が勃発。その後にロシアは紛争の再燃を防ぐためナゴルノカラバフに平和維持部隊を派遣した。だが兵員2000人強のロシア部隊は停戦監視の任務をまともに遂行できず、ロシア主導の「集団安全保障条約機構」(CSTO)の加盟国であるアルメニアは、集団防衛の義務を果たしていないとしてロシアを激しく批判していた。
アゼルバイジャン軍が攻撃を始めたその日、エレバンのロシア大使館前に集結したデモ隊は、ロシアこそ「アルメニアの最大の敵」だと怒りをぶちまけた。「ロシアの政策がこの惨事を招いた」と、デモ参加者の1人はAFPに語った。「(ナゴルノカラバフを)守る気がないのなら、さっさと出て行ってほしい」
Another proof of the truth: #Russia always betrays everyone. And Russian "peacekeeping" or "membership in the Russian-centered #CSTO" is an inevitable stab in the back in a crisis situation. Unless, of course, you are willing to delegate part of your agency and sovereignty to…
— Михайло Подоляк (@Podolyak_M) September 19, 2023
ロシアはアルメニアとの絆を強調
デモ隊はアルメニアのニコル・パシニャン首相の退陣も要求。首都中心部の官庁ビルを包囲し、治安警察と衝突した。
ロシア大使館のアレクサンドル・グチコフ報道官は、ロシア政府のプロパガンダを流すテレビ番組『ソロビヨフ・ライブ』の取材に応じ、状況は「緊迫」しているが、デモ隊が大使館に直接的な攻撃を加えるようなことはない、と述べた。
「ロシアとアルメニアの人々は何世紀もの歴史と多方面に及ぶ太い交流ネットワークで結ばれている。たった一晩であっけなく壊れるような関係ではない」――地元メディアはグチコフの発言をこう伝えた。
アゼルバイジャン軍は、ナゴルノカラバフで地雷が爆発し、兵士4人と民間人2人が死亡したとの報告を受けて「対テロ作戦」を開始、ナゴルノカラバフのアルメニア人「分離主義者」たちの軍事施設を攻撃した、と主張した。
直後に、ドローン(無人機)やミサイルの攻撃を受けるナゴルノカラバフの様子を捉えた動画がソーシャルメディア上に出回った。アルメニア側が「アルツァフ共和国」の首都と称する、ナゴルノカラバフの主要都市ステパナケルトでは、空襲警報に続いて、砲撃音が鳴り響き、多数の死傷者が出た。