数年前の秋、同じくXから保管クリーニング商品を引き受けたタナカさん(仮名)は、「カビが生えていただけでなく、くっきりシワがついていた」と証言する。
「4トントラックで、コートなどの冬物がどかんと1500点ほど届いたんですけど、袋にぎゅうぎゅう詰めで。洗った後になかなかシワが伸びなくて、厳しかったです。プロが見れば、袋に詰められたまま、長期間置きっぱなしにされていたんだろうとわかりますよ」
社員からは、「仕上げるのがこんなに大変なのに、単価が低くて、たいして利益が出ない。次は無理して受けなくていいんじゃないですか?」と進言されたという。
同じく、Xから衣類を引き受けたことのあるサトウさん(仮名)も、「預かってから数カ月以上洗わないなんて、さすがにないですよ!」とあきれ返る。
サトウさんは自身の店でも保管クリーニングを提供している。衣類は、保管状態が悪いとカビが生えて落ちなくなったり、虫食いのリスクが高くなったりするため、預かったら1ヵ月以内には洗たく・仕上げの作業をし、ハンガーにかけてエアコン完備の部屋に保管しているという。
2年ほど前、サトウさんの店で、Xが約4カ月保管していた衣類を引き受けたところ、やはりカビが生えていたそうだ。Xの担当者に報告すると、そのまま洗うように指示されたという。サトウさんは、こう苦言を呈す。
「もしカビが残っていることに気づかずにお客さんに返してしまったら大問題になるので、返却前の検品作業にすごく手間がかかった。商品管理について信用できない企業の仕事は、もう受けません」
これら下請け業者の声を、Xはどう受け止めるのか。運営会社のY社に取材を申し込むと、「株式会社Yは、株式会社Zが全株式を取得し、事業の詳細の把握や改善に着手している途中であり、現時点では取材を辞退せざるを得ない」(※原文は社名実名)と、Z社と連名の文書が届き、回答を拒否された。
前出のタナカさんは、X側の事情について、こう推察する。