ハローワークや転職サイトで職を探した。大卒4年目で結婚して以来、ずっと専業主婦だった妻も「次、頑張って探そうよ」と村山さんを励ましつつ、自らも働きに出た。方々に手を尽くした末に、パチンコやスロットマシンの設置工事を請け負う会社に就職した。

「スロットが趣味だったので決めました。ただ、新しい台が出るときが稼ぎ時なんですが、その次が出るまで1年くらいかかる。中古の機種でもいいから入れてもらいたいんだけど、パチンコホールは中古なんて買わない。業績は芳しくなかった」

3年半ほど勤めたある日、小指のない社長から呼び出された。

「月に約30万円貰っていたんですが、『月10万円に下げるか、さもなくば辞めてくれ』と言われた。さすがに生活がきつくなるんで、辞めざるをえなかった」

営業先だったパチンコメーカー社長から、人材派遣会社の設立を持ちかけられた。会社登記その他一切合財は自分1人で行い、いざスタートしたまではよかった。

「グッドウィルとかの全盛期でしたが、思ったほど利益率が上がらない。半年もしないうちに社長が飽きて、『会社を2000万円で買ってくれ』と言ってきた」

金融機関を回ったが、すべて断られた。最後は600万円までディスカウントしたが、結果は同じだった。「悪いけど、気持ちよく辞めてくれないか?」と促され、泣く泣くフリーターに逆戻りした。

ハローワークでは重労働も紹介されるが、村山さんは腰痛持ちで工事現場や引っ越しは無理。テレビのVTRのバグ探し、出会い系サイトのサクラ……様々なバイトをこなした。

「出会い系は人を釣って金を取るタチの悪いところでした。時給1300円、しかも日当で貰えたのはよかったんですが、サイトの管理者が、私が釣りのために書いているメールに難癖をつけてきた。嫌になって、すぐ辞めました」

1年前、イエローページを開いて、居住アパート近くのコンビニに片っ端から電話をかけた。片っ端から断られたが、ある店舗で、たまたま学生が辞めて生じた穴を埋める格好で入ることができた。

「面接者に『いろいろ職業を替わってるけど、何か思うところがあったの?』『弁護士に相談しなかったの?』などといろいろ聞かれましたけど、費用なんか出ませんよ。『君のせいじゃないよ』と同情はしてくれましたが……」

預貯金ゼロ。消費者金融から300万円借りた。年利は11%。

「自転車操業が当たり前。スロットで生計を立てることも考えたけど、元手が6万~7万円はないと挑戦もできません。子どもをつくるつもりはあるんですが、体質なのかな……ほんとすみません、暗い話ばっかりで……」

※すべて雑誌掲載当時

(初沢亜利=撮影)
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