無能な人はすぐ淘汰される「ジョブ型」がいい

「地方出張や長時間労働は報酬で報われる」「年功序列文化が薄くアラサーで院長可能」「時短勤務も可能だがフルタイム同僚と報酬差があるので軋轢がない」といったジョブ型の雇用スタイルが若手医師を引き付けるのだろう。

「雇い止めされやすい」という不安定雇用も「ダメな同僚は淘汰されるので、長期間フォローしなくても良い」「働かない高齢高級管理職がいない」と好意的に受け取る若手も多い。

また、渉外弁護士事務所や外資系コンサルティング業界も激務で有名だが、若手の人気は高く過労自殺ニュースを聞かない。というのも、美容外科同様のジョブ型雇用であり、長時間労働は報酬で報われるし、優秀なら若手でも出世できるし、ダメ管理職は淘汰されるからだろう。あるいはメンタルを病んだ職員は早めに雇い止めされるので、自殺まで追い込まれにくいとも言える。

過労自殺は「長時間労働」のみで発生するのではなく、「報われない長時間労働」で発生しやすい。そして「助け合い」「奉仕の精神」のような聞こえの良いフレーズで無償労働を強要する日本型年功序列雇用が続く限りは、医師に限らず過労自殺はなくならないだろう。

今後のさらなる女医率上昇が不可避である以上、年功序列組織の破綻は時間の問題である。

撲滅すべきは「長時間労働」ではなく「長時間サービス残業」である。小手先の労働時間制限よりも、美容外科や外資系のようなジョブ型雇用の導入こそが過労自殺対策であり、同時にそれが女医支援策となり、内科外科へのリクルート策やプロフェッショナルファームとしての職場の健全化にもつながるだろう。

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