スペイン、ポルトガル、ドイツ…社会主義が強い国は教育費用が安い

しかし現在、その大学院に通うには、学費と生活費を合わせて、年間1000万円近くはかかります。ざっくり総費用が5倍近くになった計算です。

これはアメリカ政府が教育予算をカットしていることと物価が高騰していることが関係しています。

また、イギリスでも教育費は決して安くはありません。たとえば、都市部で子どもを保育園や幼稚園にフルタイムで通わせようと思うと、月に12万円から25万円かかります。

教育熱心な幼稚園で私立の小学校に付属するところはだいたい20万円以上かかるというのが相場です。

国からの補助金は子どもが小さいときは若干出るのですが、ほとんど私費になってしまい、かなり負担が大きいのです。

他の先進国も実は保育費用は高く、経済成長が著しい欧州北部の国々やアメリカ、イギリスなどは高額です。

日本に近く費用が安いのがギリシャ、スペイン、ポルトガル、デンマーク、ドイツやイタリアなど社会主義色が強い国です。日本の保育園や幼稚園の自己負担額は実はタイやプエルトリコ並みの価格で、なんと世界で37位です。

世界の保育園費用(1カ月)
出所=『激安ニッポン』より

ギリシャに住み、ロンドンで働く人たち

イギリスなどの経済成長を続けている国だと、賃上げがインフレ率に追いつかず、生活が苦しくなる人も出てきます。

そのため、こういう人たちは物価や家賃が安いギリシャなどの国に住み、飛行機や自動車でイギリスまで通勤していたりします。

これは15年ぐらい前から行われはじめ、今ではまったくめずらしくなくなりました。普段はギリシャやスコットランド、スペインなどに住んで基本的にはリモートで働き、大事な会議や特別なプロジェクトがあるときだけ、一時的にイギリスに滞在するのです。

そのため欧州では、LCC(格安航空会社)や高速バスなどのサービスの需要が伸びました。もちろん、低賃金労働者が海外に出稼ぎに行くために安い交通手段を使うというのもあるのですが、海外に移住した人が通勤のためにこういった交通手段を使っています。

日本ではまだまだLCCは旅行に使うというイメージが強いかもしれませんが、欧州ではすでに15年以上前から通勤などの多様な使われ方をされてきたのです。

日本でも、家賃の安い地方に住んで、必要なときだけ東京などに働きに来るというライフスタイルはできるはずですが、実践しているのはごくごく一部の人にすぎません。これは、日本人の働き方がいかに固定化していて柔軟性がないかを反映しています。

ここ数十年で日本はすっかり取り残されてしまったわけです。