赤ちゃんの睡眠の5割は「レム睡眠」

興味深いことに、生後6カ月の赤ちゃんは、寝るとすぐにレム睡眠に入り、1日にトータル14時間ほど眠りますが、その5割はレム睡眠であるとされています。近くで見ているとわかると思いますが、眠っている赤ちゃんは、笑ったり、手足をばたつかせたり、かすかに声を出したり、おっぱいを吸う仕草をみせたりと、様々な動きをします。

そして、薄いまぶた越しに、眼球が右左と動いています。5歳になると睡眠時間は11時間でレム睡眠の割合は3割になり、10代後期からは2割になり、その後中年期まで維持されます。赤ちゃんから10代にかけて私達が脳を成長させる過程において、レム睡眠が外部情報の記憶を整理し、脳の感情や意識を整理し、長期記憶を形成する重要な役割を担っていると推定されます。ですから、脳の機能の健全な成長のためにも、赤ちゃんや幼児はなるべく早く寝かせることが大切です。

現代に生きる私達は、エッセンシャルワーカーの方以外、よくも悪くも日常生活においてあまり肉体を使わないため身体疲労はあまりありません。一方で、様々な情報や精神的なストレスにさらされているため、記憶や感情の整理は以前より重要になっています。

現代人は7~8時間の睡眠時間を確保すべき

そのため、疲労回復のためのノンレム睡眠よりも、記憶や感情を整理する後半のレム睡眠のほうがより重要になっているのです。この記憶と感情を整理する朝のレム睡眠を削り続けると(つまり短時間睡眠を続けると)、不安や混乱、抑うつ傾向が強まることが報告されています。

安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)
安川新一郎『ブレイン・ワークアウト』(KADOKAWA)

また、レム睡眠が少なくなると、感情のシグナル(表情)を読み取る能力が奪われるとされており、さらに冷静な判断力が鈍るとされています。睡眠不足の状態では、お互いの感情に鈍感になり、後悔するような感情的な発言、行動をしやすくなります。早朝、子供のお弁当作りのために頑張って早起きしていた家族に話しかけて、なぜか怒られたという人も少なくないと思います。前日の感情の整理が終わらないままに、早朝に起こされているからです。

確かに、寝入り端に足等踏んで起こしても、人は特に怒らずまた寝てしまうのに、同じことを朝方にされると大抵不機嫌になります。逆にレム睡眠をしっかり取ると、夢の中で記憶と感情が整理され、場合によっては朝起きてぼんやりしている時に、ふと良いアイデアが浮かぶことがあります。

農場や工場での肉体労働中心の昔は、主に前半の深いノンレム睡眠で体力回復さえすれば十分だったため、頑張って早起きすることには合理性がありました。しかし、知識社会でかつ感情労働の現代は、感情を整理する後半の明け方の浅いレム睡眠を確保するためにも、7~8時間の睡眠時間の確保は大切です。加齢によって明け方に目が覚めるようになってしまっても、頑張って二度寝、三度寝して、朝方の睡眠時間は確保したほうが良いということになります。

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